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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第134話:「マーケティングをやればセールスは不要」の勘違い

 

「ドラッカーが言っているみたいにマーケティングの仕組みがうまく回ったら営業はいらないというか、楽になると思うのですが、それがなかなか…」

昨年に当社に個別相談にお越しになったある社長の言葉です。営業が売りにいかなくても勝手に売れていくような、マーケティングによる「自動化」の仕組みを作りたい…とのご相談がありました。

私は(ああ、またドラッカー信者か…)と心の中で呟きながら、セールスとマーケティングについてのドラッカーの勘違いについて、この社長にご説明していきました…。


 

経営者は勉強しなくてはいけません。世の中の情勢がどうなっているかを理解することはもちろんのこと、自分の発想を広げてくれるような、自分にはない考え方を積極的にインプットすることは非常に大事です。ただし、これには条件があります。それは、「学んだことを鵜呑みにせず、自分の頭で考える」ということです。

学んだことをそのまま信じてしまう人がいます。真面目な人や勉強熱心な人ほどその傾向があるかもしれません。しかし、学んだことをそのまま丸々自分の中に取り込んで自分の意見としてしまう…つまりこれは、学んだことと自分が同一化している状態と言えますが、こうなるとかえって学んだことを「自分のもの」にすることができなくなります。

まず前提として、ドラッカーだろうが、コトラーだろうが、大前研一だろうが、彼らが言っていることは「あるひとつのものの見方」であって、万人に最適な「正しい答え」などではありません。時代は移り変わりますし、またビジネスの個々の状況も当然異なるのですから、誰かが言っていることを「そのまま」当てはめてもうまくいくはずがない、というのは当然のことです。

さらに、経営やマーケティングの神様だろうがなんだろうが、間違えるときは間違えますし、また時が流れてその考え方が時代にそぐわなくなった、ということも起こります。あまつさえ、ドラッカーやコトラーを商売にする解説者や講師、コンサルタントらが、元々の考えを間違って解釈して伝えていることも非常に多いですから、そんなでたらめな主張を信じて同一化してしまったら、経営を狂わせることにもなりかねません。

さて冒頭の「マーケティングはセールスを不要にする」というドラッカーの命題。これには彼のセールスに対する非常に偏った狭い見方が背景にあります。

ドラッカーがセールスとマーケティングの関係についての言説をいくつか引用してみましょう。
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「マーケティングは、単なる販売よりもはるかに大きな活動である。それは専門化されるべき活動ではなく、全事業にかかわる活動である。まさにマーケティングは、事業の最終成果、すなわち顧客の観点から見た全事業である。」(1954年 『現代の経営』)

 

「実のところ、販売とマーケティングは逆である。同じ意味でないことはもちろん、補い合う部分さえない。何らかの販売は必要である。しかし,マーケティングの理想は販売を不要 にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、自ら売れるようにすることである。」(1973年 『マネジメント』)

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上記、および彼の「販売」に関する他の主張から読み取れることは、ドラッカーは販売、つまりセールスを「顧客視点を持たない売り手目線での、顧客への製品の提示」ぐらいに考えているということです。

そんな、顧客を無視したセールスのやり方でものが売れたら誰も苦労しないよと言いたくなりますが、彼がセールスというものに対してこのように偏った見方をしてしまうのも無理はありません。

というのも、上記の彼の発言は1950年代~60年代の、アメリカ経済が非常に登り坂の時代をベースにしたものです。そしてこの頃は、ものを工場で作って出荷すれば放っておいても自動的に売れた時代です。今と違ってものが足りなかった時代なのです。確かにこの時期に行われていたセールスというのは「単なる販売」とドラッカーがいいたくなるような活動だったことでしょう。

そんな、ひと昔もふた昔も前のドラッカーの言説を鵜呑みにしている「自称ドラッカーコンサル」が日本にもまだまだたくさんいます。彼らは『「セールス=買いませんか?」は、お客様の都合を無視した企業側の一方的な目線です。これに対してマーケティングは顧客のニーズからスタートします』などと、どや顔で(かどうかは知りませんが…笑)語ります。

結論、セールスにせよ、マーケティングにせよ、すでに顕在化している顧客のニーズを起点に考えたのでは、顧客の心に刺さり、彼らを「購買」という行動に向かわせることはできません。米国でドラッカーがもてはやされた、大量生産・大量消費をベースにした「大きな物語の時代」ならいざ知らず、モノがありあまり、多くの人々にとって特に欲しいものがない今の時代においては、顧客の常識をくつがえす「非常識な」セールスストーリーが必要となるのです。

また、そもそも対面のセールスにおいて顧客をクロージングできないようなセールストークの考え方をベースにして、どのような手段を使ったマーケティングを展開しようとも、それで売れるようになるはずがないことは、ドラッカー論を持ち出すまでもなくわかることです。

この点を理解せず、最新のマーケティング手法さえ導入すれば売上が上がると勘違いしているコンサルタントやマーケッター、あるいはコピーライターが世に溢れていますが、どこかで見たような決まり文句のキャッチコピーのマーケティング広告に、消費者は飽き飽きしています。

経営者は自分の頭で考えなければなりません。セールスにせよマーケティングにせよ、いま自社が打ち出しているストーリーで本当に見込み客の心は動くのか。現時点では「必要ない」と思っている自社商品を「欲しい!」と思わせるだけの、破壊力のあるストーリーがそこに内在しているのか。

そのストーリーなくして、セールスの自動化もへったくりもありません。顧客の財布を開かせるということは、そんな簡単なことではないはずです。しかし、顧客の心を揺さぶるストーリーさえできれば、御社の商品は選ばれます。その時、セールスかマーケティングかなどということは単なる手段の話と化します。