「特別ビジネス」の構築で利益3倍化を実現

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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第59話:儲かる特注と儲からない特注を分けるものとは

 

「特注対応って本当に儲かるんですか?うちは手間ばっかりかかる割に単価が安くて…」―以前当社にご相談に来られた社長の言葉です。

当社では「“儲かる特注ビジネス”のやり方セミナー」と題して定期的にセミナーを開催していますが、これは「特注ビジネスはすべて儲かる」ということではなく、「儲かる特注ビジネス」のやり方があるということです。

つまり、特注ビジネスというのはそのやり方を間違えると、まさに冒頭の社長が言われたとおり大変な割には全然儲からず割に合わない、ということになってしまいます。

言い換えると「いい特注」と「悪い特注」があるということですが、ではその違いは何なのか。

それは一言で言うと「こちらに主導権があるかどうか」です。

つまり「悪い特注」というのは、こちらが主導権を握れない特注です。主導権は顧客側にあるため、彼らから仕様や納期について毎回厳しい条件が課せられる。そして、それに応えれなければ失注してしまうというビジネス形態。加工の請け負いなどは多くの場合この状態に陥っています。

このようにこちらが主導権を握れない原因は2つあります。まず一つ目は「USP(独自の売り)が効いていない」ということです。

例えば、「お客様指定の仕様や規格どおりに仕上げ、小ロット・短納期で出荷する」というビジネスをやっているとしましょう。この対応自体は顧客にとって喜ばれるもので問題ないとしても、これが同業他社でも同じ水準でできてしまうということであれば、それはUSPにはならないということです。

これは当コラムでも何度もお伝えしているポイントですが、商品やサービスがどんなにいいものでも、それが他社と同レベルであるとしたら、選択権は買い手の方にありますから高単価は通らないということになります。

やっている方は「他社とは同レベルではない」と思いたいし、実際に差はあるのだとしても、同じ切り口で争っていては「同じ穴の貉(ムジナ)」、買い手からは「同類」とみなされてしまうということです。

そして、主導権を握れない二つ目の要因は「標準化ができていない」ということです。

ここでの標準化というのは規格の標準化と業務プロセスの標準化の2つの側面があります。

まず規格の標準化というのは、特注といえでも完全特注にせずにこちらが設定した商品やサービスの規格から選ばせるということです。

これは洋服のオーダーメイドを想定すればわかりやすいでしょう。ジャストフィットのスーツをつくりますといいながらも多くの場合はパターンオーダーで、あらかじめ設定してあるパターンやサイズから一番フィットするものを選ばせているということです。

これができておらず、買い手にフリーハンドで仕様や規格や決めさせると大変です。毎回の受注がすべて「ゼロからの対応」となり非常に手間や工数がかかるだけでなく、量産が効かないためコストが非常に高くなってしまうのです。

そして業務プロセスの標準化も同様で、業務の手順や役割分担などを標準化し、仕組みで廻すということができなければ、毎回の特注対応でその都度社員が場当たりの対応をしてしまいます。こうなると対応できる社員が限られたり、誰がやるかで品質のバラつきが出てしまったり、また毎回ゼロから対応を考えることになり非常に時間とコストがかかってしまいます。

このように規格と業務プロセスの標準化ができていないと、社内は常にイレギュラー対応を強いられ、いつもバタバタしながら力技でなんとか顧客の要望に応えるということになってしまいます。

こうなると、価格や納期面で競争力を出すことは難しく、そもそも規格が買い手のものであるため「言われたものをつくる」という構図から抜け出せませんから、主導権をもつということは到底難しくなります。

特にコスト面では粗利はそこそこ出ていても、受発注や納入時の顧客対応に非常に手間と時間がかかってしまうため、営利ベースでは対して残らないということも多いです。ただ商品別に営業利益まで出していないとその実態は見えないですが、実は儲かっていると思っている特注商品が全体の利益を圧迫しているということはよくあります。

以上のように、USPがなく標準化もできていない特注対応では買い手に対し主導権を握れず、儲からない割にはバタバタ忙しいという状態になってしまいます。

またそういった仕事を強いられる社員はやる気がそがれていき、かつ標準化できていないとその技量も上がっていかないため、組織としての力も上がっていかないということになります。

ここまで「悪い特注」について書きましたが、では「良い特注」というのはどのようなものか。

これは前述の反転、つまりUSPが効いており、かつ標準化ができているビジネスに仕立てるということになります。

まだ業界が目をつけていない意外な切り口での特注対応を「キラーサービス」として設定し、他社とは比べられない存在となること。そしてそれを規格・業務プロセスともに標準化して、仕組みで廻していくこと。これが実現できれば、独自の存在として顧客に対して主導権を持つことができ、かつその仕組みを組織力で廻していくことで、他社が真似したくてもとてもそのレベルには追いつけないという地位を確立することができるのです。

特注だ、イレギュラー対応だと言っても社内までイレギュラー対応になってはいけません。「外から見れば思いっきりイレギュラー、中から見れば普通にレギュラー対応」という状態をつくることが、儲かる特注ビジネスを展開するポイントです。

顧客からの無理な要望を社員に押しつけるのではなく、USPと標準化で主導権を握れるポジションを確立していきましょう。