【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第195話:社員が反対したいときほどチャンスあり!

「中川さんのご助言どおり一人で全部決めてよかったですよ。社員に意見を聞いていたらこの企画、潰れてました…。」― クライアント先のA社長がしみじみ振り返ります。
既存事業からかなり路線変更のビジネスアイデアを企画する際、幹部社員を検討初期から議論に加えるかどうかでご相談を受けました。
私は、A社長の性格や同社の経営幹部の経営リテラシー(経営やビジネスについての理解度や経験度)を考慮し、新規事業の検討は社長ひとりで進めるようご助言しました。なぜなら、社員はとにかく反対してくることが予想されたからです。
そういった社員の反対意見も聞いた上で、社長が彼らを説得し、最終的に社長が判断して意思決定をする― このやり方が望ましいのかもしれませんが、温和なA社長の性格では、おそらく社員の言うことを聞きすぎて、企画が骨抜きになっていたことでしょう。
結果は、社長と専任の新入社員の2名で新規事業を立ち上げることができ、幸運にもすぐさま大きな契約を複数取ることができました。もちろん立ち上げ時に全社員に説明はしていましたが、当時の社員の反応は冷ややか。のちに結果が出てはじめて社員たちの賛同を得たという具合です。
以前に読んだニトリ会長のインタビュー記事にこうありました。
『だいたい、役員たちはみんな常識的だし、リスクを嫌う。私はよく「最大の敵は社内の幹部だ」と言うんですが、改革をやろうとするといつも止められる。』
『逆に言えば、幹部が反対したときほどチャンス。だって常識の裏を行くわけだから、そこには誰も手を付けないチャンスが眠っている可能性が高い』
世の中の中小企業も実情は同じようなものではないでしょうか。当社が関わらせていただいた企業においても、幹部社員の方々は基本的には保守的で、新しいアイデアには否定的な方が圧倒的に多かったわけですが、それはある種当然のことと思います。
やはり経営者は経営者、社員は社員です。経営者は飯の種を見つけて、それをお金に換える責務を負っています。一方、社員の方は極論すれば与えられた仕事をきっちりこなした見返りとして給料をもらう立場です。発想に違いが出るのは当然のことでしょう。
そんな立場にある社員たちからは、新規事業のアイデアに対してこういった意見が出されます。
「それは当社ではやったことがないからリスクが高すぎる」
「顧客ニーズが見えないから賛同できない」
「既存の顧客がなんていうか…」
「我々は現業で手一杯なのに一体誰がやるんだ」…などなど
創業社長であれば一笑に付すような発言ではありますが、こういう意見をいちいちくみ取っていては事業など立ち上げられるはずもありません。
そもそも、今までやったことがないから新規事業なわけで、自社ができることの範疇でビジネスアイデアを考えたところで、そんなものはただの既存事業の焼き直しにすぎません。
また、すぐに「顧客ニーズはあるんですか?!」と食ってかかってくる人がいますが、これは「ビジネスは今すでにある(顕在化している)需要に対応するもの」という思い込みからくる発想です。
昔の高度成長期の時代ならいざ知らず、すでに見えている需要に対応して事業を立ち上げても二番煎じになるだけです。もう誰かがとっくにそのニーズを満たしています。「競合と同じことを彼らよりもうまくやろう」という昔の日本のやり方は通用しないのです。
また、幹部社員が「現業で手一杯!」と訴えるのも本来おかしな話です。幹部は現場で作業をする人ではなく、「経営の仕組みを作る人」のはずです。新しい事業、新しい商品・サービス、新しい顧客、新しい業務の仕組み、そういったものをつくるために考え実行するための「余白」を持っておく必要があります。
そもそも、ビジネスの企画は筋がいいけれども実行できる社員がいない、ということであれば、できる社員を雇ったり外注を起用したりと、いくらでもやり方はあります。こんなことは起業家たる経営者にとっては当たり前の話ですが、社員レベルだと「自分目線」でしか考えられません。
結論、社長はワンマンである必要があります。社員たちの顔色をうかがっている場合ではありません。もちろん、幹部を育てるために彼らに事業戦略を描かせることは、どこかの時点で必ずやる必要があります。しかし、複数の社員に意見を聞いてバランスを取ろうなどとはしないことです。会社がコケます。
いま企業は大きな変革を迫られています。
あなたは自社の進むべき道が見えていますか? 社員の顔色ばかり見ていませんか?