【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第197話:周りと同調する経営者がたどる末路

「このままじゃ政治に殺されますよ」― いきつけの居酒屋の店主が悲痛の声を上げていました。緊急事態宣言の延長を受けて、お酒が出せずに客入りは激減、かといって都から一向に協力金が振り込まれないとの悲惨な状況に、もう精魂尽き果てたとのこと。
「都知事に殺されちゃあたまらん!」と、6月からは通常オープンに踏み切っているお店も多いようですが、人が政治に殺されている状況が続いています。
2020年の自殺者増加は750人とのことですが、足元ではもっと増えています。前年同月比で3月は167人、4月は292人の増加。しかも女性や若年層の増加が顕著とのこと。
一方、コロナによる死者は累計で1万人を超えているとはいいますが、亡くなった方の8割が70歳以上であり、しかも死後のPCR検査が陽性であれば肺炎で亡くなろうが交通事故で亡くなろうが「コロナ死」に数えられますから、相当眉唾な数字であると言えるでしょう。
しかも、高齢者のコロナ死者の6割が高齢者施設ということですから、このコラムをお読みいただいている高齢者の方には申し訳ないですが、行動規制をかけるべきは高齢者であって、主要都市の飲食店や百貨店を一律規制するのはナンセンスであると私は思います。
さらには、コロナ発生時から日本よりもよほど厳しく規制をしていた台湾でコロナが急増している事実をどう捉えるのか。これは「コロナを抑えることなどできない」と考えるのが普通であって、国や自治体が本当にやるべきは「病院の受け入れ態勢の強化」にほかならないはずが、そちらの方は一向に手がつけられていません。
しかしながら、そのような状況にあっても新聞社による電話調査では小池都知事への支持は57%あるといいます。テレビを毎日観ているとこうなってしまうのかも知れませんが、こうなると戦前に日本国民の大半が開戦を支持していたこともうなずけます。
さて、つらつらとコロナについて書き綴ってしまいましたが、何が言いたいかというと、人というのはやはり大勢(たいせい)に従いたい生き物であるということです。
大多数が「カラスは白い」と言っているところに「いや黒でしょ!」というのはしんどいことですし、まして国などの権力が「白だ!」と言っている場合は、「まあしょうがいない」となってしまう。つまり大勢、そして体制に従っておいた方が楽だし無難だということです。
マスクだってそうです。国がマスクを配った頃からマスク着用がほぼ強制となりましたが、政府が「マスク不要」を宣言しない限り、子供が持久走で死のうがマスクを外す人は出ないのではないでしょうか。
実際、私は息苦しいのが嫌いなため機内かお客様のところに伺うとき以外はほとんどマスクをしませんが、あちこちで叱られたり睨まれたり…。これはこれで楽なことではありません。
あまり他と違うことはせずに無難にいきたい…日本の教育化ではこのような考えになるのは致し方ないのかもしれませんが、ここでお伝えしたいことは、経営者がこの発想でビジネスをしたらどうなるかということです。
経営者は知らず知らずのうちに「業界の同調圧力」にさらされます。「普通、この業界ではそこまではしない」とか、「〇〇業というのはこういうものだ」といった考えです。
実際はそんな「圧力」は存在しないのですが、他社と同じような内容や価格で事業をやれば無難ですし、楽です。お客様から少なくとも文句を言われることはないでしょうし、業界で一番にはなれなくても、ちゃんとやれば食えるのは食える…。
しかし、経営者がこのマインドで経営を続けたとしたらどうなるか。気概も夢もない、骨抜きの社員が育つだけです。そしてそんな状態が長年続いてしまったら…。いざ何か新しいビジネスチャンスと巡り合ったとしても、もはやそれに反応する瞬発力は組織として持ち合わせていないでしょう。檻は空いているのに出ていかない象と同じです。
経営者とは本来すべからず起業家です。これは創業社長であろうがなかろうが関係ありません。業を起こすことが企業の役割なのです。だから経営者は自分で考えて動くことが求められます。上に従うサラリーマン根性で経営が成り立つはずがありません。
なにより、経営トップは自分たちの手で何かを仕掛けることに喜びを感じる人でないと無理でしょう。そんな人でないと社員を感化できませんし、優秀な社員ほど辞めていきます。
人というのは大勢・体制に従いたい生き物だといいましたが、一方で「何か自分たちならではのことがしたい」という欲求も間違いなく持っています。それは、当社のクライアント企業の方々の変貌ぶりを見ても明らかです。「うちに強みなんてありません」「この業界はどこもやっていることは一緒です」と無表情に語っていた社員が、議論を重ねるごとにどんどん前のめりになります。人は自分のオリジナリティを持ちたいものなのです。
社員のその気持ちに火をつけるのが経営者の役目です。その経営者が「こんなご時世だからしょうがない…」と思考停止になっている場合ではありません。ご自身の起業家魂に火をともし、実際に行動を起こすことで、社員の体温をぐっと上げていきましょう。