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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第198話:競合の話が出てこない会社の特徴

 

「うちがいかに競合のことをわかっていなかったか、今回痛感しましたよ…」― クライアント先の社長の言葉です。

いくら綺麗ごとを言おうと、ビジネスは戦いです。市場に見込み客が無限に存在するならば、ライバル会社と仲良く分け合えばいいのですが、もちろんそんなはずはなく、数ある同業の中から自社を選んでもらえなければ市場撤退を余儀なくされることになります。

こうして書いてみると恥ずかしいぐらい当たり前の話なわけですが、この「ビジネスはライバル会社との顧客の奪い合い」という現実を、自社の社員がまったくわかっていない、あるいは目を背けているという会社が非常に多いのもまた現実です。

「いやいや、敵ばっかり見ててもだめしょう。見るべきはお客様じゃないですか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。あるいは、「いや、うちはお客様からご好評をいただいているので、ちゃんと競合と差別化できていますよ」という方もいらっしゃると思います。

実際、しっかり顧客と向き合い、彼らの根本的なニーズを満たしていれば、競合のことなど意識する必要はないかもしれません。

ただし、ここで非常に注意する必要すべき点があります。それは、「その顧客というのは少数の得意客(馴染み客)のことだけを言っていませんか?」ということです。

事業が成長軌道に乗らない企業によくある特徴のひとつに「顧客数が増えていかない」という点があります。新規顧客を獲得するための営業やマーケティングの施策をとらず、少数の既存顧客に頼る形態を続けている企業です。

そういった会社にもたいていの場合営業マンは複数います。しかし、彼らがやっていることは既存顧客への対応であり、その多くは見積作成、納期調整やクレーム対応といったことです。新規顧客へのアプローチは「忙しくてやっていない」となります。

そのような会社では社内で競合の話題が出ることはありません。必然的に社内の話題は内向きの話になります。自社の業務についてのことや、社員の個人レベルの問題についての議論に大半の時間を費やします。

経営者はこう考えます。「社内にはいろいろ問題はあるものの、お客様は概ね満足しているし、このまま業務を改善していけば大丈夫だろう」と。

そして、往々にしてそれは大きな勘違いであったと思い知らされることになります。たとえば、得意先からある日突然「〇〇という会社からこんな提案が来たんだけど…」と連絡が入るケースです。駆けつけてみると、同業他社から自社よりも優れた製品やサービスが安価で提案されています。

自社が限られた少数の得意先だけを相手にしている間に、競合は競争力のある商品・サービスを開発し、シェアを伸ばし、もう勝負にならない程の実力差をつけていたということです。

ここで目が覚めてそのライバル会社を研究し、自社がいままでいかに胡坐をかいていたかに気づいて対策を取れる会社はまだ見込みがあります。しかし、悲劇は起こります。自社の営業マンが事態を深刻に捉えず、上に状況を報告しなかったり、単に「値下げ要請がきた」という程度の上げ方をするような、経営者からしたら信じがたい出来事が平気で起こり得ます。内向きの組織とはそういうものです。

こうならないためにはどうしたらいいか? 答えは簡単で、「外向きの会社になる」です。具体的には、市場・顧客の動向を肌で理解するために、常に新規の見込み客にアプローチする仕組みを持つことです。

まだ自社が入り込めていない新規の見込み客(=競合の得意先)に実際に会って話しを聞けば、いやでも競合の話しはできてきます。その見込み客をものにしようと真剣にアプローチすればするほど、その競合のことが理解できるはずです。

経営者が社員に「ちゃんと競合分析しろ!」と指示を出しても、社員はまともな分析を出してはこないでしょう。ネット上で出ている情報か、顧客に軽くヒアリングした程度の情報に留まる可能性が高いです。なぜなら彼らは競合のことを理解する必要性に腹落ちしていないからです。

その昔、私の前職のミスミで三枝社長(当時)に聞かれたことがあります。「人が成長するためには何が必要かわかるか?」と。私は「経験ですか?」と答えました。すると同氏は「それは痛みだ」と。痛みを乗り越えてこそ人は成長する。そして実際にミスミで私はさんざん痛みを味わされました。

新規開拓を営業マンのやる気に任せず、やる気があろうがなかろうが経営の仕組みでそれが実行される体制をつくることが肝要です。そうして彼らが見込み客を攻める中で、顧客の声に真摯に向き合う。そうすることで、競合の実力も嫌というほど見せつけられることでしょう。その痛みが次なる行動の原動力となるはずです。

ときには経営者自らそういった見込み客の声を直接聞くことも非常に重要です。これは自社の営業マンを信用していないということではありません。経営者も社員と一緒に痛みを感じ、それを社員と共有し、一緒にそれを乗り越えていくことで、自社が「外向きの会社」になっていきます。

『敵を知り己を知れば百戦殆うからず』ー敵を知ることではじめて己のこともわかるということです。広く市場や顧客を理解し、その中で競合も知った上で、では我々は何をすべきなのかと考えを深める。その答えが御社の存在意義となります。存在意義を持つ会社はとても強くなります。

御社が持つべき答えは「外」にあるのです。