【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第240話:業績低迷に悩む社長が意識すべきこと

「来世にいい人生が送れるように今世はもっと徳を積まないと…」── 旧知の社長のご紹介で食事をご一緒した経営者の方が口にされた言葉です。
「今世の善行は来世で報いを受ける」という考え方はインド駐在時代によく現地の部下から聞かされましたが、日本人経営者の口から聞いたのは初めてでした。
私は来世のことはあまり気にしていませんので(笑)、来世のために頑張るという考えは持っていないのですが、この経営者が言われた「徳を積む」という考え方には大いに共感するところです。
この経営者の方はほかにも「やり方なんか問題じゃない。大事なのはウェイなんだ!」「儲かるとか言いたくない。結果なんてずっと後からついてくるものだ」といった骨太な思いを熱く語られ、こちらも身が引き締まる思いがしましたが、そのあとふと思ったことがあります。
それは、業績低迷で苦しむ経営者は「来世」どころか「来期」のことも考えていない人が多い…ということです。
「考えていない」というのは正確ではないかもしれません。いまや多くの経営者が一応つくっている「経営計画書」的なものには来期・再来期の業績数値計画ぐらいは入っているものでしょう。
しかしながら、その来期の数字はただの楽観的な予想や希望的観測の域を出ないものが多く、「どうやってその数字を創るか」という具体的な戦略のレベルで考えている人は多くはないはずです。
当社にご相談に来られた経営者の中には「今期の業績が非常に良くない」ということで「なんとかしなくては」と思いお越しになったというケースも少なくないですが、やはり今期の低迷は「前世」ならぬ「前期」までの仕込み不足が結果として表れているにすぎません。
「種まき」と「水やり」がなければ「刈り取り」ができるはずもないことは誰でもわかることですが、業績低迷にあえぐ企業はやはり出発点である「種まき」が不足しているのです。
事業というものは必ず陳腐化します。それは「人は歳をとる」というのと同じくらい明確に言えるものです。にもかかわらず、現場で忙しい社員は目の前の「刈り取り」ばかりに精を出します。これはある種当然のことですが、経営者はその状態を放置してはいけません。将来の成長のためには常に「成長の種」を仕込んでいかなければならないのです。
自社がいかに「短期目線」で仕事をしているかを確認するいい方法があります。それは、いま社内で走っている「重要プロジェクト」を書き出してみることです。
ここでいう「プロジェクト」とは受注案件のことではありません。「事業成長のための取り組み」を指します。
具体的には以下のようなプロジェクトが考えられます。
・新しい業界への進出検討
・新商品・サービスの開発
・新しい仕入れ先や外注先の開発
・新しい商社や代理店の発掘
・新しいマーケティングの仕組み構築
・納期短縮の取り組み
・クレーム低減のためのオペレーションの見直し
・生産性向上のための自動化設備の導入
・脱属人化のための業務の仕組み化
・人事評価制度の導入・見直し…
うまくいっている企業では上記のようなプロジェクトが必ず何かしら走っています。そして、それぞれのプロジェクトの進捗を定期的に確認し、議論する「場」が必ず設定されているものです。
経営者は常に「うちのの課題は何か?」と考え、その課題を解決するための取り組みをプロジェクト化する必要があります。そしてそれを仕組みで管理するのです。そのサイクルを絶え間なく廻していくことでしか事業を成長軌道に乗せることはできません。
もし自社が短期的な動きしかできていないとしたら、「来世」のことはいいですから(笑)、とりあえず「来期」のことを考えましょう。そして、中長期プロジェクトを仕組みで廻す体制をつくりましょう。そうすることで、連続的な「刈り取り期」を得ることができるようになります。
継続的な成長のために「プロジェクトベースの経営」を実践していきましょう。