【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第245話:成長企業は持っている、自社の強みを一言で表すキーワード

「たしかにうちの特徴を言い表す言葉がぜんぜん入っていないですねえ…。当時、結構お金をかけて作ったんですが…」── 自社のホームページを改めて確認し、F社長は苦笑されました。
そんなF社長に幹部社員が言います。「社長、しょうがないですよ。当時はうちの強みなんて誰もわかってなかったんですから!」
このように、自社の強みもアピールポイントもよくわかっていないまま、とりあえず自社ホームページをつくってみたという会社は非常に多いことでしょう。
F社のホームページにも、高品質、短納期、小ロット、技術力…といった、部品製造会社ならどこでも言いそうな言葉がならんでいます。
それでも「ないよりマシ」と思う方は多いと思いますが、もし自社のホームページに自社ならではの強みを表すキーワードがしっかり入っていないとすれば、それはマーケティング的にもったいないだけではなく、より深刻な問題が隠れている可能性があります。
というのも、そういったキーワードを持たない会社は、これから自分たちが何で勝負していくのか、どんな武器を磨いていくのか、といったことがわかっていないということだからです。
そういう会社は全方位的にちゃんとやろうとしがちです。そうなると努力が分散します。その結果、なんでもそつなくこなせる「可もなく不可もない会社」になってしまう可能性が高くなります。
市場全体が伸びていた時代には、そのような「無難な会社」でも重宝されました。ところが今はそうはいきません。特徴を持たない会社は相手にされませんし、ホームページをつくったところで見てもらえません。今の時代はマーケティングにせよ営業にせよ、とにかく「自社を言い表すキーワード」が必要なのです。
ちょっと余談になりますが、私はご飯を食べにいくと、よく「ここは何が美味しいですか?」と店員さんに聞くようにしています。
その際に「うちはどれを食べても美味しいですよ」と言われると一気にテンションが下がります。なぜなら、そんなわけないですし(笑)、答えとしてもしょうもないのです。
ひどい場合には「そんなの私の主観になりますから!」などと言って答えない店員がいたりしますが、興醒めもいいところです。この世界に主観以外に何があるんでしょうか?
そうではなくて「うちはどれも美味しいですけど、中でもトマト冷麺は絶品です。これは食べないと損です!」なんて言われたら、俄然興味が沸きますし、そこから会話も生まれるというものです。「このメニューが好きすぎて、ここで働くようになりました!」なんて言われたらこちらも一気にファンになってしまいます。
これはマーケティング的にも同じことです。なんでも美味しいという店なんて、記憶にも残らないし、いますぐ行く必要性も感じないという話です。そしてそのうち忘れられるのがオチです。
そして、同じことを多くの会社がホームページ上でやってしまっているということです。
見込み客が御社のホームページに辿り着いたとしても、見てくれるのはほんの一瞬です。トップページのファーストビューに御社ならではの「決めゼリフ」を表示させなければなりません。
F社も数ヶ月かけてその言葉探しに取り組んで来ました。そして、同業他社が言っていない「手つかずの言葉」にたどり着きました。ここからF社の事業はガラッと変わることになります。
この「自社のキーワード」は事業の軸となっていきます。そして、軸がある企業は強いです。軸は「芯」ということもできます。芯があるとやることがシンプルになっていきますし、少々なことではブレなくなります。
同業他社がみんな言っている言葉で勝負するのは苦しいです。ガチンコで戦ってもお互いが消耗するだけです。中小企業が高利益体質になるためには、自分たちならではの戦い方を見つける必要があります。
ホームページは御社の顔です。そして人の顔はみんな違うように、ホームページも同業他社とは違う言葉が並んでいてしかるべきなのです。
御社は自社の特徴を言い表す「独自の言葉」を持てていますか?みんなが言っている言葉を並べて埋もれてしまっていませんか?