【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第246話:市場「総ニッチ化」時代に中小企業が意識すべきこと

「やっぱり中小企業はブルーオーシャンを狙わないといけないですよね? あ、ブルーオーシャンはだめなんでしたっけ?」ー クライアント先のK社長と飲みながら談笑していたときにこう言われました。
私が著書の中で「そんな平和で静かな青い海の市場などあるのでしょうか? もしあったとしたら、そこには敵だけではなく顧客すらいない可能性が高いです。そんな市場でいくら頑張ってもビジネスの広がりは期待できません」と書いていたことを思い出されての発言です。
人生において「幸せの青い鳥」をさがしてもしょうがない(そんな鳥はいない)のと同じように、ビジネスにおいても「顧客はいるのに競合はいない楽な市場」なんてものを探し求めるのはナンセンスです。
じゃあバリバリのレッドオーシャンで競合とガチンコ勝負をすればいいのかというと、もちろんそれもダメです。中小企業がしっかり利益を出すためには「とにかく競争を避けること」が非常に大事になってきます。
ブルーオーシャンなんてない。でもレッドオーシャンでもダメ…。では黄色い海でも探すのかというともちろんそれも違います。
結論としては、やはり中小企業は「ニッチを狙え!」ということになるのですが、「ニッチな市場」を狙うのではなく「ニッチな手法」を使うというのが中小企業がとるべき戦略です。
つまり、市場としては顧客の存在がちゃんと確認できて競合もしっかりいるようなレッドオーシャンでいいのですが、自分だけが戦い方を変えるという発想が必要になります。
そんな自分だけ戦い方を変えるなんてできるの?と思われる経営者も多いかもしれませんが、しっかり利益を出している会社の多くは激戦市場であっても絶妙に戦い方を絶妙に変えて利益を出しています。
たとえば、レッドオーシャンの代表格といえば「家電量販店」の業界が挙げられますが、従業員を無理をさせない「がんばらない経営」で有名なケーズデンキは、創業以来70年間ほぼずっと増収を続けています。
彼らの戦い方は「手厚い接客」です。都心の駅前には出店せず、郊外の車でやってくるファミリーやシニア層をターゲットにし、丁寧な接客で顧客満足度を高めています。
彼らはCMで「新製品が安い」と言っていますが、価格はたいして安くはありません(笑)。郊外に出店していて丁寧な接客をやっていれば、来訪客が他社を回って価格を比べるということがあまりないため、安くする必要がないからです。
同様の戦略を突き抜けてやっているのが、有名な「でんかのやまぐち」です。同社は超レッドオーシャンの東京・町田にありながら、顧客に便利屋さんのような「裏サービス」を提供することにより、安売りならぬ高売りを実現しています。他社よりも10万円高くても買うという顧客もいるといいますから驚きです。
別の戦い方の例では、ECサイトの拡充で業績を伸ばしているのがヨドバシカメラです。その品揃えと納期の早さで売上を年々伸ばしており、同社の2021年度EC売上は2221億円と、日本でアマゾン以外で初の2000億円超えを果たしています。
以上、家電量販店数社の戦い方を紹介してきましたが、ここで言いたかったことは、レッドオーシャン市場でありながら、ちゃんと利益を出している会社は業界トップのヤマダ電機とはガチンコ勝負していないということです。
そして、皆さんはヤマダ電機のような「値段を下げてシェアを獲る」という戦い方をしちゃっていませんか?ということをあらためて確認していただきたいのです。
「コンセプトをずらす」── これが高収益事業をつくる上で必須の考え方となります。業界の常識から外れることが必要なのです。そうしないと価格競争による消耗戦は避けられなくなります。
逆に言うと、商品の売り方や提供の仕方を変えるだけで、同じ商品でもずっと高値で売れる可能性があるということです。とにかくよそと同じように売らないことです。
同業者がみんなやっているやり方で社員に頑張らせても、得られる成果は限られてきます。社員を動かす前に事業コンセプトを練り上げる。それが戦略です。いかにずらすか。その知恵を絞るのが経営陣の役目となります。
御社は激戦市場を正攻法で攻めて消耗していませんか? ビジネスは知恵比べです。業界の常識の殻をやぶり、独自の事業コンセプトを構築していきましょう。