【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第250話:うまくいく企業とそうでない企業の最大の違い

「中川さんに依頼される企業は、やっぱり業績が悪くなったところが多いんですか?」── ここ数年関わらせていただいている企業の経営者からこう聞かれました。
コンサルタントを起用する企業というと、イメージ的には「業績が悪化し苦戦しているところ」という認識が一般的かも知れませんが、実は案外そうでもありません。
もちろんそういった「業績を立て直したい」という動機でご依頼いただくことも多いですが、反対に「業績がいいうちに次のネタを仕込んでおきたい」「10年先を見据えて事業革新をしたい」といった、現在好調の企業から支援を依頼されるケースも多々あります。
どちらのケースがコンサルティングがやりやすいかというと、当然後者のケースになります。業績が悪くなったときというのは、時間的にも資金的にも余裕がなくなりますし、打てる手も限られてくるからです。
そして、そういった時間やお金の問題だけでなく、うまくいっている企業とそうでない企業には、往々にして共通する「ある違い」があります。
その違いがあるせいで、うまくいっている企業はますますうまくいくし、そうでない企業は何をやってもなかなかうまくいかない、ということがよく起こります。
その違いとは、「空気の軽さ」です。
人や組織には「空気感」としか言いようがない雰囲気、印象、オーラ的なものがあります。それが、うまくいっている企業は軽く、うまくいっていない企業は重いのです。
うまくいっていない企業の社員は往々にして「視点が内向き」です。議論をしていても「自分たちの都合」的な発言が多くなります。
・人が足りない
・強い商品がない
・競合が強すぎて敵わない
・業界が低調
といったものです。
多くの社員の口から自己保身の言い訳や愚痴が出てきます。そういった発言をすることが癖になっています。視点が「自分、自分、自分」なのです。このような組織は空気が重い。ですから、なかなか動きません。
うまくいっている企業はちょうどこの逆で、「視点が外向き」── つまり顧客の方を向いています。議論をしていても、顧客に対して「こうしてあげたい」とか「これをやってあげると喜ぶ」とか、そういったアイデアが比較的よく出てきます。そこに愚痴や恨み節めいたものはありません。
そういった企業では、やりたいことが今の自分たちの実力ではできないからといって、そこで思考停止になりません。さまざまな手段を柔軟に考えることができます。
さらに、こういった組織の人たちは、努力を苦痛と思いません。そして、少しでもできるようになると素直に喜びます。逆にうまくいかない会社は、ちょっとやってダメだったら、「やっぱり自分たちには無理」と結論づけます。自ら成長の機会をつぶしてしまうのです。
このように、うまくいく企業では、組織の空気が軽いのです。そして、空気が軽いということは、心が自由だということを意味します。この「心が自由であるか?」というのは、企業にとって非常に大事な問いとなります。
社員の心を自由にするのは、やはりリーダーの役目です。リーダーたる経営者の言動や心持ちで当然ながら企業風土は変わってきます。
組織の空気を軽くするリーダーは、一言でいうと「寛容」です。新しいアイデアやこれまでと異なる意見に寛容、そして失敗にも寛容です。つまり器が大きいということです。
『やってみなはれ』── これはサントリーの創業者の言葉として有名ですが、これは「あかんかったら上がケツを拭く」ということでしょう。ちゃんと考えて可能性があると判断したのなら、あとはやってみないとわからない。ビジネスとはそういうものです。やる前からできない理由を並べる組織に未来はありません。
そうやって社員の背中を押せる経営者というのは、「最後はうまくいく」と決めている節があります。これは「何をやってもうまくいくはず」というお気楽な発想ではなく、最終的な「うまくいく」という地点に向かって手を打っていく覚悟を持っているという感じです。
「絶対にうまくいかせる!」とガチガチに力をいれるのではなく、「しっかりやればなんとかなる」と、いい意味で力が抜けている状態。このようなある種の楽観主義が組織の空気を軽くするのです。
いま自社にいい流れがきているか、そうではないか。経営者であればそれは明らかでしょう。もしいい流れが来ているならば、その流れにのって事業革新をどんどん進めてください。もし流れが悪いのならば、いままでの延長線上ではない「新しいノリ」が必要です。何かを変えてみることです。
「うちは大丈夫! 必ずうまくいく!」── そう心に決めて、そして心を自由にして、新しい試みを試してみてください。その動きは組織の澱みをなくし、空気を軽くします。いつの時代も「動けば変わる」のです。
世の中の空気を軽くし、人の心を温かくするような企業の挑戦を、多くの人が待ち望んでいます。
次は御社の番です!