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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第260話:「人」に頼る経営が事業を駄目にする

 

前々回のコラムで「経営の鍵は『バランスを取ること』」と書きましたが、多くの中小企業で顕著になっている「バランスの悪さ」があります。

それは「人」に頼りすぎているところです。正確にいうと「一部の人に頼りすぎている」ということです。

営業面でいうと、社長や営業部長しか新規案件を取ってこれなかったり、製造面では一部のベテラン社員にしかできない工程があったり…。

よく「2:8の法則」とか「2:6:2の法則」と言われますが、上位2割の優秀な社員のおかげで会社が回っている状態です。

そんな一部の社員に頼り切る状態に経営リスクを感じ、なんとか他にもいい社員を採用しようとされる経営者も多いですが、実際にはそんな簡単に優秀な社員が採れることはありません。

そしてなにより、また別の「人」に頼ろうとしているわけですから、もし仮にいい人が採用できたとしても、「バランスの悪さ」という問題の解決にはつながらないでしょう。

「一部の優秀な人に頼る」というバランスの悪さを是正するためには、別の「強い社員」を雇うのではなく、その優秀な社員の「強さを抑える」という発想が必要になります。つまり、その優秀さを封じ込むアプローチです。

「そんなバカな(苦笑)。せっかくの優秀な社員に成果を出してもらわなくてどうするんだ」と思われる経営者の方も多いと思いますが、そのように物事をバラバラに見てしまうと全体の強さを損ねてしまうのです。

これはゴルフで例えるとわかりやすいです。もっと飛距離を伸ばしたいからといって、右腕の筋肉をひたすら鍛える人なんていないでしょう。むしろ右手の使いすぎを抑えないと飛距離も方向性も台無しになります。

組織の動かし方もこれと全く同じです。ゴルフスイングにおける右腕は「一部の優秀な社員」です。そしてゴルフスイング自体は「仕組み」です。つまり、一部の優秀な社員の強さに頼る発想を持ってしまうと、全体を動かすための強い仕組みをつくる発想が弱くなってしまうのです。

たとえば営業でいうと、一握りの凄腕営業マンは独特の嗅覚で獲物(ターゲット顧客)をみつけ、巧妙に相手のニーズを察知し、提案に対して断られかけてもとっさに機転の効いた切り返しで商談を成功させますが、そのような職人芸を普通の人に移植することは不可能です。

普通の人に成果を出させる発想が必要になります。「2:6:2」の法則でいう「6」の人です。彼らに必要なものはそのような天才芸のレクチャーではなく、まして一般的な研修でもありません。

全体としての営業力の底上げに必要なものは、「売れる仕組み」です。

「売れる仕組み」の構成要素は多岐に亘ります。

  • ターゲットを明確にするための事業領域の絞り込み
  • 他社と比べられないための商品・サービスの磨き込み
  • 見込み客に興味を持たせるためのフロントマーケティング
  • 成約率を上げるセールスストーリーの構築とツールの作り込み
  • PDCAを回すための営業進捗の見える化

といったものです。

こういった仕組みをつくることで、大半の「普通の社員」が成果を上げることになります。そして、「一部の優秀な社員の力を抑える」とは、一人でガンガン売ってくるのではなくて、このような仕組みの構築に労力を割かせるということです。

まもなくサッカーワールドカップが開催されますが、日本代表の歴代最長キャプテンといえばディフェンダーの長谷部です。彼はプレーヤーとしてはそこそこでしたが、キャプテンとしては非常に評価されています。全体を活かすことができたからです。

そして、キャプテンとして彼のあとを次いだ吉田も谷口もディフェンダーです。点取屋のフォワードではありません。これは感覚的に非常に理解できることではないでしょうか。点取屋のストライカーの多くは「俺の好きにさせてくれ」という一匹狼的なキャラクターであり、全体をマネージする役割には必ずしも適任ではないということです。

大企業と比べて社員数の少ない中小企業においては、つい「人」に意識が行きがちです。そして仕組みづくりまで手が回りません。結果、大企業に労働生産性で大きく劣ってしまいます。

何事もバランスが大事です。意識が「人」に向きすぎているならば、一旦そこから離れ「仕組みづくり」に注力する。そして仕組みができたならば、その仕組みを機能させるために「人」をとトレーニングする。この順番が肝要となります。

御社では全社員に「点を取れ!」と発破をかけるだけで終わっていませんか?
 全員が成果を挙げるための仕組みづくりに着手できていますか?