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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第261話:「社長が自社売却を考えてみるべき理由」

「できれば会社を売るようなことはしたくないしねえ。ほんと後継者がいないことだけが悩みですわあ…」ー 定期的にお会いしている大先輩の経営者の言葉です。

最近は若い経営者が比較的短期に自社を売却して、その資金でまた新事業を立ち上げるというパターンもよく目にするようになりました。

しかし、この方はもうとっくに引退されてもいいお歳ですし、別にお金も欲しくないとのことで、自社の売却には消極的とのこと。

この方のご懸念は私も理解できるところです。というのも、M&Aというのは買った側のマネジメントがよほど優秀でない限りうまくいかないケースが容易に想像されるからです。

M&Aでは基本的には最終的に事業会社との合併となりますが、そうなると買った側と買われた側では仕事のやり方は当然のこと、組織の文化や社員の価値観といったことまでことごとく違ってくるのが常です。そして、買われた側の社員たちが大切にしてきた多くのことが否定されることになりがちなのです。

これは想像だけでお伝えしているのではありません。私が実際に過去に関わった米国でのM&A案件でも、買われた方の事業は大袈裟にいうと「解体されておいしいところだけ残った」という感じで、合併後の状況はそこにいた社員たちにとっては気の毒なものでした。

これはアメリカだから起こること…というわけではありません。確かに日本の経営者はイーロン・マスクのようにドラスティックにはやらないとしても、要らない社員は給料を下げて窓際に追いやる(そして本人が辞めるのを待つ)という昔ながらの手法もありますし、それに近頃は大規模なリストラが実施されることも何も珍しくないことです。

といっても皆さんに言いたいことは「会社を売るのはやめましょう!」ということではありません。むしろ、後継者の有無にかかわらず一度自社売却について考えてみるということをお勧めしたいのです。

これは、会社を売ることをお勧めしているわけではなく、あくまで仮定の上で「もし売ったら事業と社員はどうなってしまうのか?」と想像していただきたいということです。

いまの状態で会社が買われたとして、いまの事業や社員たちは大丈夫なのか…

ちゃんと事業は存続し、社員たちはイキイキと働いていけるのだろうか…

そういったことについてもし気がかりなことがあるとしたら、いまのうちにご自身の手でなんとかしておかれるとよいです。

もし「あー、あいつはクビになるだろうな」と思う社員がいるとしたら、その社員が活躍できる方法を考えてやる。

「これは即刻廃止されるだろうなあ」というような商品やサービスがあるのなら、リニューアルするか自らの手で葬り去る。

「まだやり残していることがあるなあ」と思うことがあるのなら、自分が動けるうちに実行に移す。

「みんなバラバラに働いてるなあ」と思われるのなら、社員間、部署間で連携できる仕組みを作っておく。

「うちはリーダータイプの人間がいないから、向こうの会社の言いなりになってしまうなあ」と思われるのなら、強いリーダーを持つための採用/育成計画を立てる。

「そもそも事業が儲かってないから誰も買ってくれないよなあ」と思われるのなら、収益力を高めるために事業戦略を見直してみる。

このように、「もう最後の最後、手放す前にできることは全部やっておこう!」という気概で自社の現状を見直してみると、いまやっておきたいことはたくさん出てくるはずです。そしてそれを時間軸を区切ってしっかり実行していけば、自社の価値が飛躍することは間違いありません。

後継者がいない会社であっても、上記のように事業と組織を強くするためにいまできることをしっかり取り組んで行けば、それだけ経営トップの負担が減るわけですから後継者選びも楽になってきます。「社長は俺しか務まらない」という状態ではなくなってきます。

もちろん、まだまだ引退には程遠い経営者であれば自社を売却する気などまったくお持ちではないと思いますが、それでも「仮に3年後に売るとしたら…」と考えると発想が広がり、「自社の磨きどころ」が見えてくるのではないでしょうか。

何事も終わりよければすべてよしといいます。ご自身の「引き際の美学」から自社の出来上がりの姿を想像し、そこから逆算で打ち手を考え実行に移す。そんな「ゴールを見据えた経営」を実践されることを心よりお勧めいたします。