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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第143話:競合価格を参考にするほどビジネスが駄目になる理由

「思い切って高い価格をつけてしまうのがいいって、先日のコラムで書いてありましたけど、競合の価格も参考にしない方がいいってことでしょうか?」―― 少し前のコラムをお読みいただいた経営者の方からご質問をいただきました。

価格競争が激しい業界で、常にお客様からもライバル会社の価格を引き合いにだされ、値下げ要求が入るとのこと…。さすがに競合価格を無視して勝手に値段はつけられないだろうと思われたようです。

この経営者のご懸念はごもっともな話で、世の中の多くの経営者が「ライバル会社の価格に対してうちはどうするか…?」との問題で悩まれていることでしょう。

この問題がなぜ悩ましいかというと、かの稲盛さんも「値決めこそ経営」と言っているように、値決めというのは単に値段を決めたらいいということでは全くないからです。値決めというのは、それによって自社の戦略のすべてが変わってくるというぐらい経営戦略の根幹にあたる部分であり、当社のコンサルティングにおいても価格戦略については一日を割いて考え方をご説明しているほどです。

そして、冒頭の「競合価格は参考にするのかしないのか?」との問題ですが、この点で当社でいつもお伝えしていることは、「値段を決める際に競合の価格は参考にしてはならない」ということです。

なぜ参考にしてはいけないのか? これに対する答えは実にシンプルで、「競合価格を参考にしたとたん、事業の発想がしょぼくなる」からです。

そもそも、「競合の価格が参考になる」ということは、当然のことながらその価格がついている競合の商品・サービスが御社のものと似ていることが前提となります。まったく似ても似つかないものであれば、その価格など参考になるはずがないからです。

これは逆に言うと、競合の価格を参考にすることで、自社の商品やサービスがどうしても競合のものと似てしまうことになります。つまり、競合の価格を参考にするというのは、競合の商品・サービスの内容を参考にする、というのと同じことであるといっても過言ではないということです。

これに対し、「いや、うちの商品は競合とはだいぶ違うし、真似などしていない!」と言いたくなるかたも多いと思います。しかし、やはり「価格が参考になる(参考にできる)」ということは、やっぱり競合商品と似てしまっているのです。

そして、自社の商品・サービスの内容が他社と似てしまうということは、それはそのまま「その事業がしょぼい」ということにつながります。なぜならビジネスの本質は差別化だからです。実に単純です。

価格は顧客へのメッセージとなります。顧客は商品・サービスを選ぶときに価格を見てその内容やクオリティを判断します。たとえ商品内容が他社よりいいものであっても、同じような価格がついていれば、まあそれほど変わらないだろうと無意識のうちに判断することになります。

これとは逆に、もしある商品の価格が尋常に高いとしたらどうでしょうか。たとえば、駅弁がずらっと並んでいて、どれもだいたい1000円から1500円程度なのに対し、あるお弁当だけ1万円の値段がついているとしたら…。これはもはや駅弁といえるものではなく、買い手は「なんだこれは?」と興味を引くはずです。

そんな極端な!と思われたかもしれませんが、実際、新大阪駅には3万円のお弁当を売っているお店があります。ここは注文を受けてから神戸牛のステーキを焼いて提供するというお店です。さすが大阪!むちゃくちゃだな(笑)と思われるかもしれませんが、週に2、3個はコンスタントに売れているといいます。

こうなるともはや駅弁ではありません。もちろん内容もそうですが、この価格設定によって買い手はこのステーキ弁当を他の駅弁と比べたりはしないはずです。実際、この弁当を新幹線に持ち込む人は、ワインなども買って車内で優雅なディナーを楽しむそうです。カップルやご夫婦でシェアされる方も多いとのこと。

これが、「駅弁だからどれだけ高くてもやはり2千円が限界か…、いくら高くても2千5百円だろう…」というように考えていたのでは、おそらく内容は大したものではなくなり、話題性もほとんど出なかったことでしょう。

競合の価格など、最後に確認する程度でいいのです。「よし、やっぱりうちと全然違う。よかった」といった具合です。絶対に避けるべきことは、せっかく苦心して世の中にない独自のものを生み出したのにも関わらず、よくある価格設定にしたために「普通のもの」と思われてしまうリスクです。

「うちは高いんです」と胸を張ってお客様に伝えられるようにすることです。なぜなら、そこから先のストーリーが必ず必要になるからです。「うちが他社より高い理由」―― この言語化が御社の事業を飛躍させます。

御社の価格は顧客に刺さるメッセージを伝えていますか?