【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第168話:失敗から学べる会社は何が違うのか?

「社員がこれだけ失敗をしでかすのは、まだまだ仕組み化が足りないと彼らが教えてくれているんでしょうね…」── 年初よりコンサルティングに取り組まれている製造業のS社長が、自らに言い聞かせるようにこうおっしゃいました。
同社はこれまでS社長の高い事業開発能力で成長を続けてこられましたが、さらなる飛躍のために「自社の強みを仕組みで廻す体制」の構築に目下取り組まれているところです。
「これだけの失敗はケーススタディとして社内で共有すればいいですよ。もちろん講師はミスを起こした張本人です」とお伝えすると、「しくじり先生ですね!」と社長は表情を緩められました。
PDCAという言葉は使い古されていますが、実際にちゃんと会社内でPDCAを回している会社は多くありません。特にC(チェック)をしっかりやっていない会社がほとんどでしょう。
計画を立てて(P)、行動を起こしたら(D)、そのままやりっぱなしで振り返りをしないというパターンです。
特にうまくいかなかったこと、失敗したことについての振り返りが往々にして避けられがちです。「ダメだったら次がんばろう!」とばかりに失敗が「なかったこと」になってしまったりします。
これは一見ポジティブな姿勢に見えますが、失敗に冷静に向き合わず、そこから何も学びや教訓を得ずにやみくもに次に進んだのでは、これは単にポジティブバカと言われてもしょうがありません。
現に、当社がこれまでに関わらせていただいた企業においても、しっかり業績を伸ばしているところは、この「失敗から教訓を得て次に生かす」ということを徹底して実施しています。
ここで非常に重要なことは、「失敗について単に反省したのでは何の意味もない」ということです。
反省とは「自分の良くなかった点を認めて改めようと考えること」と定義されます。これは一見良いことのように思えますが、これをビジネスでやっても大して意味がありません。なぜなら、この行為は単に「感情(感傷)に浸っている」だけだからです。
ビジネスにおいては失敗について反省することのではなく、失敗から「反省論」を導き出すことが非常に重要です。つまり感情で処理するのではなく、ロジックを持つということです。
事前の想定とどこが違ったのか?
何を見落としていたのか?
計画に不備があったのか、実行面で失敗があったのか?
成功させるためには何を変えればいいのか?
これらについて検討し、次に生かせるよう「仕組み」にまで昇華させる必要があります。この「失敗や不具合が起こったら仕組みを見直す」という習慣を持てているかどうかで事業成長の確率は大きく変わるのです。
冒頭のS社長との会話に関しても、失敗を起こした社員に「反省」を述べさせようというのではありません。当事者だからこその気づきを「論理」に、そして「業務の仕組み」にまで昇華させる、そのことに向き合わせることによって当人の成長を促すとともに、貴重な気付きを社内に根付かせることを狙うのです。
当社ではつねづね「人の問題を抱えている会社は仕組み化不足が原因」をお伝えしていますが、失敗から学びを抽出して仕組みに反映させるサイクルができれば、社員は無用に感情に振り回されることなく冷静に成功確率を高めていくことができます。
よく「熱い組織」という表現が使われますが、感情にまかせて意見をぶつけ合うような「熱さ」では組織で結果を出すことはできません。自分たちの仕事の意義や目的、理念に対しては熱さを持ちながらも、その実現のためには論理的にロジックを積み上げる「ロジカルな熱さ」が求められます。
『反省ではなく反省論』── 目の前の成功や失敗に一喜一憂するのではなく、日々の出来事からの教訓を抽象化して、社内の仕組みを進化させていきましょう。