「特別ビジネス」の構築で利益3倍化を実現

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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第171話:儲ける経営者が絶対に避けていること

 

「JALやANAの競合はいまやZOOMなんですねえ…」── 最近当社のコンサルティングを開始された流通業のH社長が感慨深げにこうおっしゃいました。「いったい誰が敵になるかわからないものです…」

確かにH社長のおっしゃるとおり、コロナ禍によって競争環境ががらりと変わりました。交通機関や観光業界、あるいは飲食業の市場(需要)はテレワークや巣ごもり消費にとって代わられました。

とりわけ、これまでインバウンド消費に支えられ、またオリンピック開催を見越して先行投資していた観光業界は大きな打撃を食らっています。

旅行業者大手4社(JTB、日本旅行、近ツリ、HIS)だけで6万人も社員がいるそうですが、GOTOによって潤っているのは楽天トラベルやじゃらん(リクルート)といったネット通販組ばかりで、旅行専門業者は相変わらず大変に苦しい状況のようです。

あるいはホテル・旅館業も人が集まっているのは高級ホテル・旅館ばかりで、安価なビジネスホテルはまったく利益を出せておらず、非常に危機的な状況のところも多いとのこと…。

これまで同業者を競合とみなしてせっせと戦っていたところが、世の中の変化によって彼らが「同じ被害者の仲間」となってしまうという事実を見せつけられているわけですが、ここにうまい商売をやる秘訣が隠れています。

それはつまり、「同業者とは戦わない」ということです。

これまで世の中で伝えられていた経営理論やマーケティングは「いかに同業他社に競り勝つか」との命題に答える形でさまざまなフレームワークが捏造されてきました。

そして企業の方も、同業者より少しでもよい品質を、少しでも安く、あるいは少しでも早く…そういった、いわゆるQCDでの戦いを繰り広げたり、あるいは少しでも集客で上回ろうと様々な宣伝広告に力を入れたりしてきたわけです。

しかしながら、そういった「競合とガチンコで戦うことの無意味さ」がこのコロナで浮き彫りになっています。

「でもそれはこのコロナの異常事態が起こったからであって、平時では競合と戦わないわけにはいかないじゃないか!」と思われる方も多いかもしれませんが、実はコロナ云々に関係なく、大きく儲ける経営者というのは「いかに競合に勝つか」ではなく「いかに競合と戦わないか」ということに注力しているのです。

競合と戦わないというのは正確に表現すると「競合と同じ戦い方はしない」ということです。

この点は拙著「儲かる特別ビジネスのやり方」でも詳しく書いていますが、いかに競合と競り勝とうとも、同じ戦い方をしている時点で買い手からみたら「同じ穴のムジナ」、つまり差をつけているようで似てしまうということが起こってしまうのです。

業績で突出している企業は、同業者とはまったく違う視点で顧客にサービスを提供します。

ホテル業であれば、ホテルの立地や部屋の清潔さや宿泊料では戦わない。

英会話スクールも同様に、立地や料金では戦わない。

飲食店であれば美味しさでは戦わない(美味しいのは当たり前)。

バーであればカクテルの多さでは戦わない。

製造業であれば、品質・価格・納期では戦わない。

問屋・商社であれば商品の品ぞろえでは戦わない。

美容院であれば、店舗のおしゃれさやカットの腕では戦わない。

本当にそんなことができるのか?と思われるかもしれませんが、こういった発想をせずに中小企業が同業者とガチンコで戦ったところで、否応なく消耗戦を強いられて疲弊するだけです。

現に武術の世界では、敵と戦わないことが「無敵」、つまり最強の戦い方だと説いています。

スポーツの世界もそうです。日本が突出して強くなった競技は必ず欧米の列強国が「ルール変更」を協会に迫って自分たちを有利にします。これも「同じ戦いを避けている」ということです。

ビジネスも同様に戦いを避けることが究極の競争戦略なのです。戦略とは「戦いを略する」と書くとおりです。

当社が『特別ビジネス』を提唱しているのもこの理由からです。同業者がまだ目をつけていない特別対応・イレギュラー対応を顧客に提供することで、「従来とまったく違う理由」で顧客に選ばれる── このアプローチで業界水準をはるかに上回る利益率を確保する企業が続出しています。

この「特別ビジネス」を成功させる上で重要なことは、「自分たちの当たり前を捨てる」ということです。

人を宿泊させることがホテルの当たり前ではありません。

英語を教えることが英会話スクールの当たり前ではありません。

素材を加工することだけが加工業の仕事ではありません。

歯を治療することだけが歯科医院の仕事ではありません。

無意識のうちに前提条件にしている当たり前を捨てることで、「戦いを避ける」切り口が見えてきます。当たり前を捨てた企業だけが、「疲弊しない経営」を実現することができるのです。

競合と同じ視点でいくら差別化を試みようとも機能しません。差別化ではなく独自化── 道なき道を進んでこそ、その会社の存在意義があるというものです。

御社はどのような独自の視点で市場を捉えますか?