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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第172話:経営者が理解しておくべき「言葉を売る」の真意

 

「中川さんの本、何度も熟読しました。自分に落とし込むために、要点や心に刺さった言葉を1枚の紙にまとめて持ち歩いています」──  先日当社のセミナーにお越しいただいた社長がその紙を見せていただきました。

これは大変うれしい話です。本の内容が一過性の清涼剤や刺激剤でなく、「使えるもの」として認めていただけたわけですから、著者冥利に尽きるというものです。

頭の中にある、なんとも言えないモヤモヤした思いや考えを実際に言葉にして表現することは正直非常に骨の折れる作業ですが、そもそも無形のモノを売っているコンサルタントという職業にとって、この「言語化」という作業は避けて通れないものです。

コンサルタントに限らず、コピーライターや作家、あるいは教材をつくっている人なども、無形のモノを言葉にして生み出しているということですから、「言語化」で飯を食っている人たちということになります。

しかしながら、こういった人たちだけが言葉で食っているわけではなく、どんな職業においても飯のタネはこの「言語化」にあります。いかなる人も実は売っているものはこの「言葉」なのです。

そういうと「いやいや、確かに商品を説明するときに言葉は使っているけど、売っているものはモノだから言葉じゃないですよね?」とか、「うちは実際に手を使って患者さんに施術しているんだから、言葉なんか売っていないですよ」と言われそうですが、メーカーだろうが施術家だろうが、売っているのは言葉そのものということになります。

例えば御社がペットボトルに詰めた水を販売しているとしましょう。これも「水」という言葉があってはじめて人はそれが水だと理解します。「水」という言葉がなければそれが何かわかりません。

「水」という言葉がもし存在しなかったらどうするか? 「透明な液体」、「味のない飲み物」、「水素と炭素で生成されて──  」…もうお分かりのとおり、これらもすべて言葉で表現されたものです。もし言葉がなければ、我々は水だろうが何だろうが、物事を認識することはできないということです。

ちょっと話の抽象度が高すぎてわかりにくかったかもしれませんが、ここはざっくりと「何事も言葉で表現しなければ始まらない」という程度で理解していただいて結構です。そして、これがビジネスにおいて非常に大事なポイントとなります。というのは、自社商品やサービスを売るための「言葉」が圧倒的に足りないというケースが非常に多く見受けられるからです。

たとえば前述の「施術家」のケースもそうです。整体師やマッサージ師などの施術家の多くはリピートが取れない!というのが悩みだったりするのですが、それは腕が悪いからでもなんでもなく、単純に言葉が足りないからです。

念のために申し上げると、言葉が足りないというのは、もっとべらべらしゃべらないといけないということではありません。「やっぱりここでよかった。また来よう」と思える言葉を与えていないということです。

現に、いろんなところでマッサージなんかを受けても、よく言われることといえば「すっごく凝ってますねえ」とか、「しばらく通われた方がいいですよ」といった程度…。

これに対してしっかりリピート顧客を獲得している施術家の方は、たとえばこんなことを言ったりします。「あ、ここがこれだけ凝っているということは、本当はこっちが良くないんです。そしてここを治すためにはよくある施術ではだめですので、今日は念入りに…」と、自分が考えていることをちゃんと言語化して伝えるのです。

最近ちょくちょく当コラムでご紹介している「平均単価8千円超の散髪屋」も、この「言葉を尽くす」ということを徹底しています。「2ミリの丸刈り」とのこちらのオーダーに対して「はい。ではここからここまでは2ミリ、横は頭の形に合わせて1ミリから1.5ミリで調整して、耳回りと襟足は0.8ミリで揃えますね」と。

おそらくどこの散髪屋でもこんな風に調整しているのでしょうが(現にバリカンの調整スイッチをカチカチやっていますので笑)、このようにちゃんと言語化しているところに私は今まで出会ったことはありませんでした。

これは古い例になりますが、その昔、アメリカで業界下位に甘んじていたシュリッツビールという会社から依頼を受けたコンサルタントが、その会社がやっていた非常に手間のかかる工程を見て感動し、「この醸造工程を消費者に知らせよう!」と提言して実際に広告に出してみたところ、半年で業界トップに躍り出たという話があります。しかもその工程は実はどこのビール会社でもやっている、ごく当たり前のことだったにも関わらずです。

プロとしてお客様の満足のためにどのような考えを尽くしているのか、それをしっかり言語化して伝える必要があります。無形のものを言葉によって「モノ化」してはじめて、それが相手にとって「価値あるもの」となり「買えるもの」となります。

これは何度もお伝えしていることですが、いまの時代に「モノ」だけを売ってもお客様は満足しません。あるいは手足を動かす「作業」も同じです。お客様はもっと深く関わってもらうことを望んでいます。そのためにはこちらがプロとして持っている「視点」や「知恵」を売る必要があるのです。

御社では、自社の商品やサービスがなぜ相手にとって必要なのか、そしてそれが他社とどう違うのかについて、相手の心が動くレベルで言語化できていますでしょうか? その判断を顧客にゆだねてしまっていないでしょうか?

自社の「独自のウリ」がしっかり相手に届く──  そんな言葉を紡いでいきましょう。