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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第177話:「いい会社」をつくろうとする社長が見落としていること

「中川さん、そろそろうちも「いい会社づくり」に本腰を入れていこうと思います」── 前々回のコラムでご登場いただいたG社長がまたコラムのネタを提供してくださいました(笑)。

私はいつもの調子で答えます。「いい会社をつくろうとすると失敗します。経営者向けの勉強会で言われているようなことは鵜呑みにしない方がいいです」

それを聞いたG社長は「あーまただよ…」といった顔で続きを待たれました…。


 

「ブラック企業」という言葉の誕生とともに、「社員にやさしい会社づくり」が奨励されるようになって久しいです。

いい会社をつくりましょう!

社員を大切にする会社にしましょう!

ホワイト企業を目指しましょう!

こういった「いい会社づくり」を後押しする言葉がメディアを通して伝えられています。お手本となる会社は「社員を大切にする会社大賞」や「ホワイト企業大賞」といった賞を与えられ、現場で日々行われている様々な施策が広く紹介されます。そして、多くの経営者がそれらを参考にし、取り入れることになります。

朝礼はたっぷり時間をとった方がいい。

残業は駄目だからもっと人をいれよう。

社員研修も充実させないと。

ありがとうカードというのも使ってみようか。

トイレ掃除で心を整えよう。

やはり社員旅行は海外へ。

車座で飲み会も定期的にやろう…などなど

とにかく「いい会社」にすこしでも近づけたいと思って、できることから導入します。そして、そういったことを頑張りさえすれば会社は良くなると経営者が本気で信じているとすれば、おそらくその会社の経営状態は悪化の一途をたどることでしょう。

ここで起こっていることも、当コラムで再々お伝えしている「目的と手段のすり替え」です。本来は何かを実現するための手段であるはずの「いい会社づくり」が目的化してしまっているということです。

そもそも、この世界に絶対的な「いい会社」など存在しません。言葉の意味はその文脈で決まります。どんな会社が「いい会社」なのかは、その会社の理念や事業の目的によって変わるのは当然のことです。

残業がなくて、休みもしっかり取れて、社員旅行もあって、その他福利厚生も充実している…果たして本当にこういったことが社員が望むことであって、それらをやれている会社が彼らにとって「いい会社」なのでしょうか。

仕事というのは自己実現の手段です。もちろん、食べていくためにお金を稼ぐ手段という面はベースにあるものの、お金がもらえれば仕事はなんでもいいというものではないはずです。

そのことはおそらく社長が一番身に染みてわかっているはずです。創業社長であれば、わざわざ起業のリスクを背負ってまでやりたいことがあったという方が大半でしょうし、創業社長でなくても同様で、他にいろんな選択肢がある中でわざわざ責任の重い社長業を引き受けられたということは、そこには事業にかける想いがおありになったことと思います。

以前に「第49話:社長と考えの合わない社員がのさばる訳」というコラムを書きました。ここでは、以下の4つのタイプの社員のうち、Dは論外として、たとえ仕事の能力は高くても、社長と想いを共有できないCの社員こそ退職を勧めるべきだと書きました。

A:社長の考え方や価値観と合い、かつ仕事もできる
 B:社長の考え方や価値観と合うが、仕事はできない
 C:社長の考え方や価値観とは合わないが、仕事はできる
 D:社長の考え方や価値観と合わない、かつ仕事もできない

たとえ想いが共有できなくても、能力の低いDの社員を社内に置いておいたところでそれほど害は大きくないでしょう。もちろんその社員の人件費分は会社にとって損害ですが、どのような組織にしたところで2:6:2の法則ではないですが、仕事ができない社員というものはどうしたって存在するものです。

しかし、仕事ができるCの社員はどうでしょうか。社内における影響力や発言力がなまじっかあるために、たとえ仕事はできるとしても「社員の心を束ねる」という経営上きわめて重要な点においては大きなマイナスになる可能性があるということです。

逆に、Bの社員であれば、根本のところの想いは同じなわけですから、あとは仕事のやり方を仕組み化・標準化し、実際の業務の中でしっかり訓練していけば、大半の社員はおそらくなんとかなるといいますか、しっかり戦力化してくれるはずです。

仕事のスキルはいくらでも後付けで身につけることができます。ですが、社長が抱いている「この事業にかける想い」に社員が共感できないとすれば、これはもうお互い不幸としか言いようがありませんし、そんな社員が多くいる会社で働き方をどういじくったところで「いい会社」になどなり得るはずもありません。

逆に言えば、「この会社でやっていること、やろうと挑戦していることこそ、自分の人生においてやりたいことだ」と個々の社員が思えるとしたら、こんなに強いことはないでしょう。

どんなに能力が高い人でも、そのことにのめり込んでいる人、没頭している人、ハマっている人には勝てないものです。これはある意味当然で、後者の人材はそのことについて四六時中考えたり、ときに捨て身で行動できたりといったことが、自然にできてしまうからです。

ということは、社長の事業にかける想いを単なる想いにとどめず、それをしっかりと事業コンセプトに落とし込むことこそが、社員にとっても自分がこの会社で頑張るべきかどうかの判断基準を持つことになり、結果、同じ目的を共有できる仲間と強い組織をつくることにつながると言えます。

何事も目的があっての手段です。そして、よそはよそ、他社は他社です。当社は何をするために存在するのか、なぜ自分たちが頑張る必要があるのか、なぜ他社では駄目なのか── その想いにしっかりと向き合い、それを実現する事業プランを構築・実践していきましょう。

想いをひとつにして顧客のためにがんばる会社を、当社はこれからも応援します!