【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第188話:組織が病気になるたった2つの原因

「えっ、中川さん、痛風ですかー。それはそれは…。健康に関してはこれを読めばいいですよ!」── 先日、突然痛風を発症した私に同業の先輩がある本を紹介してくれました。
「人が病気になるたった2つの原因」という本なのですが、この本では、人が病気になる原因はさまざまありそうなところを「原因はたった2つ」と言い切っています。
その2つの原因とは「低酸素と低体温」なのですが、読み進むうちに「確かにその2つはむちゃくちゃ体に悪そうだな」と思えると同時に、「これは会社経営でも同じじゃないか…」という気がしてきました。
つまり、会社経営が行き詰まってしまう根本原因も、この「低酸素と低体温」にあるのではないかと。
「低酸素の経営ってなんだ?」と思われると思いますので、もう少し解説します。まずは、なぜこの2つが人が病気になる原因になるか、ということですが、ヒトのエネルギーを生み出すシステムというのは、①酸素を使わない「解糖系」と、②酸素を使う「ミトコンドリア系」という2つがあるそうです。
なんの話だ?と思われるかもしれませんが、もう少しお付き合いください。この①の「解糖系」というのは、わかりやすく言うと猛ダッシュをするときに使われるような作用です。呼吸をせずに一気に駆け抜けるイメージですね。
このシステムでは、瞬発力や即効性はあるものの、無酸素ですので長続きせず、これをずっとやっていると当然ながら強いストレスを生み出します。
一方で、もうひとつの「ミトコンドリア系」というのは、呼吸をしながらゆっくり栄養素を燃やしていく作用で、即効性や瞬発力では「解糖系」に劣るものの、生み出すエネルギー量は高く、また持久力・持続性があるという特徴があります。
別の言い方をすれば、「解糖系」はガンガン動く交感神経系、「ミトコンドリア系」はゆったりした副交感神経系、という言い方もできるでしょう。
わざわざ2つの異なるエネルギー生産システムを持っているのですから、当然両方使うのがいいわけですが、病気になる人の多くは前者の解糖系ばかり使ってしまって無酸素で突っ走ってしまうために、ストレスを抱えて「低酸素・低体温」になってしまうということだそうです。
ガンになる原因も、働きすぎや心の悩みなどによるストレスと、それによる血流障害(=冷え)が主な原因と言われていますから、同じことですね。
つまり、あくせく頑張りすぎてしまうと「あっぷあっぷ」の状態になってしまい、より強いエネルギーを生み出す「ミトコンドリア系」が働かないという、非常にもったいないことになってしまうということなんです。
ここまでお読みになった経営者の方は自社の組織運営や社員の働き方と照らしてどのようにお感じになったでしょうか。「うちも無酸素系だなあ…」と思われた方も多いのではないかと思います。
動かない社員のケツを叩いて無理やり目の前の仕事をさせれば、一瞬は瞬発力が出て成果につながるかもしれませんが、ずっとそうやって社員にハッパをかけ続けたところでお互い疲れますし、長続きしません。組織が疲弊していくだけです。つまり組織自体が「低酸素・低体温」になってしまうということです。
ここでお伝えしたいことは、「社員をあまり頑張らせ過ぎないように…」という単純な話ではありません。もっと強いエネルギーを生み出せる可能性がありますよ、ということです。
自社の組織が無酸素で息切れすることなく、有酸素の「ミトコンドリア系」でより大きなエネルギーを生み出すためにはどうすればいいのか?
いろんな考えがあると思いますが、私が考えるひとつの解は、「経営に長期視点を入れる」ということです。
どのような会社を目指すのか、事業はどのように進化させていくのか、自分たちの理想の組織の在り方はどのようなものか…。こういった、自分たちの「出来上がりの姿」のイメージを持つことで、組織を構成する社員一人一人の体温がジワジワと上がってくるはずです。
もちろんイメージだけでは不十分です。その姿に現実に到達するために方法を社長と幹部社員がしっかり議論して戦略を立てることで、それが自信を生むことになります。そしてその戦略から日々やるべき戦術(アクションプラン)を導き出していくことで、自分たちがやっていることに確信がもてるようになります。
つまり、社員に長期視点を持たせることで、彼らが「全体感を持って仕事ができる」、あるいは「自分たちの仕事に『意味』を見出すことができる」という変化がうまれるわけです。
そうなると、組織がゆったりと深く呼吸することができ、体温も上がり、いまよりも大きなエネルギーがふつふつと湧いてくるイメージが持てるのではないでしょうか。
そして非常に大事なことは、そういった長期目標や戦略を考える『場』を普段から定期的に持つということです。
少し落ち着いたらそういうことも考えていこう…このように思っていたらいつまでも無酸素で目の前のことに対処する体制は変わりません。そういう鞭の打ち方しかやってきてないからです。いま忙しかろうが暇だろうが、そんなことに関係なく、定期的に長期視点に立った議論をする「場」を持つということが事業の持続的成長には不可欠なのです。
皆さんの会社では、継続的に取り組んでいく「長期戦略を走らせる仕組み」は機能していますか? 社員に無酸素の短距離走ばかりさせていませんか?
御社の「出来上がりの姿」の実現に向けて、より大きなエネルギーを生み出していきましょう。