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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第190話:重要な案件を先送りしないための極意

 

「これ、やろうやろうと言いながらずっと先送りしてだけど、やっと前に進むねえ…笑」― いま関わらせていただいているM社の社長が会議で幹部社員にそう話されました。

問題が山積みで「どこから手を付けたらいいかわからない」と言われていた状態だったのが、社内の重要な問題をいち早く解決する仕組みが整いつつあります。

「モグラたたき専門」― 目の前の問題を表面的に解決するだけで根本に手をつけないために、ずっと問題が起こり続けている自社の状態を自虐的にそう呼ばれていましたが、モグラたたきはかなり減ってきた様子です。

この、かつてのM社のように、目の前の問題の対処に追われて根本的な解決を先送りしている会社は非常に多いのではないでしょうか。

まさに、過去にベストセラーとなった「7つの習慣」で紹介されている「木こりと斧」の状態ですね。

森の中で木を倒そうとかれこれ5時間もノコギリをひいているきこりに対して「ちょっと休んで、ついでにそのノコギリの刃を研いだらどうだい? そうしたらもっと早く仕事が片付くよ」と声をかけたところ、「刃なんて研いでる時間ないよ。切るだけで精いっぱいだ」と言い返した…という話です。

この話の言わんとしているところはもちろんわかるし、自社でも重要な問題に着手しようといつも話しているが、実際には全然進んでいない、という会社も多いかもしれません。

なぜ重要な問題が先送りされてしまうのか― 実はその理由は実は非常にシンプルです。それは、重要な問題の解決が「プロジェクト化」されていないからです。

「プロジェクト化? えらい大層な話ですね…」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、この「プロジェクト化」ということの意味がちゃんと理解できると経営は劇的に変わります。

仕事のやり方・進め方を現状よりも少しでも良くする― これは日々の現場で工夫してやっていただくべきことです。これを「改善」と呼びます。これは社員全員による取り組みです。

一方で、事業の新たな方向性を決めたり、仕事のやり方・仕組みを根本から見直したりといった大きな問題、これは「現場での工夫」といったレベルでは扱えません。これは「改善」ではなくて「改革」となります。そしてこれは経営幹部がリードして取り組むべきものです。

こういった「改革」レベルの話を現場に任したところで、彼らにそのような意思決定の権限もありませんし、またそれを扱えるだけの大局的な視点も持ちえないでしょうから、いつまでたってもその問題は解決されないということになります。

現場の工夫ではなんともならない問題を解決する― これは経営幹部の仕事です。経営幹部が現場で社員と同じようにモグラたたきをやってはいけません。そして、そういった経営幹部がリードして解決していく問題はすべて「プロジェクト化」すべきものなのです。

では「プロジェクト化する」とはどういうことなのか?

プロジェクトマネジメントの手法にはいろいろありますが、プロジェクト化の「いろはのい」であり、最も重要なことはなにかというと、それは「プロジェクトの名前をつける」ということです。

「まあそらプロジェクトというからには名前ぐらいつけるだろ」と思われかもしれませんが、この「経営上の重要案件に名前をつける」ということがものすごく重要で、ちゃんと仕組みで経営をしているところは必ずやっていることです。

何事も名前がつくまではその存在に実感が持てないものです。わかりやすい例でたとえると自分の子どもです。子どもが生まれたら当然名前をつけますが、生まれたときにまだ名前を決めていない場合、ものすごく落ち着かない状態となります。わが子なのに呼びようがないからです。自分で抱っこしながら自分の子だと実感できない…そんな中途半端な気持ちになるのです。

あるいは車を見にディーラーに行ったとします。とても気に入った車があって、「これなんという車ですか?」と聞いたところ「すみません、この車はまだ名前が決まっていないんです。でもご購入いただけますのでご安心ください」と言われたとしたらどうでしょうか? 買えませんよね。

これとは逆に、たとえば製造業の会社が自社の商品を開発する際、その商品に名前がついたとたん社員は一気にその商品に愛着を持ちます。まだ商品が全然できていないのにも関わらず、もう今すぐにでも売りたくなるものです。

これと同じで、社内の重要案件も名前をつけたとたん、一気に臨場感が湧くといいますか、社員が自分事と思えるようになります。

納期を短縮したいなら、「納期短縮プロジェクト」とか「納期1日化プロジェクト」などと名付ける。

クレームを撲滅しないといけないのなら、「クレーム撲滅プロジェクト」とする。あるいは略して「CBプロジェクト」などとしてもいいでしょう。

新市場に打って出たいなら、「新市場開拓プロジェクト」。

業務の仕組み化ができていないのなら、「業務仕組み化プロジェクト」とか「仕組み再構築プロジェクト」とする。

まだまだ検討段階だから…この場合は名前を「〇〇検討プロジェクト」とすればいいだけのことで、とにかくなるべく早くといいますか、その問題や課題が認識されたらすぐさまプロジェクトにして名前をつけることです。

プロジェクトに名前がついたならば、プロジェクト責任者、プロジェクトの目的・ゴール、そしてゴールを達成するための各アクション項目と実行担当者、そして締め切り、といった必要なことを経営会議で決めていく流れとなります。

細かいことはさておき、とにかく大事な問題は社内でいち早く認識し、それに名前を付けてプロジェクト化し、そしてリーダーを決めて実際に着手する、そのサイクルを定着させることが大切です。その体制ができてはじめて「経営」とよべるものになってきます。

御社では事業の重要案件を経営陣が取り上げるサイクルはできていますか?
「モグラたたき専門」になっていませんか?

自社が継続的に強くなっていく仕組みを構築していきましょう。