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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第193話:なぜあの社長の言葉は社員の心に響くのか?

 

「発言に重みがある人というのは何が違うんでしょうかね?」― お仲間の社長がこんな疑問をふと口にされました。

「やはり経験が必要か…、それとも人とは違う視点を持つことが大事なのか…」ご自身の言葉がいまいち相手に刺さらないと感じる場面があったのかもしれませんが、「自分の言葉に重みを持ちたい」ということは経営者やビジネスリーダーであれば誰しもが思うところかもしれません。

「社員を動かす」という文言は、ビジネス関連の書籍や記事などの中でそこらかしこで目にします。それだけ「社員が動かない」と悩んでいる経営者やリーダーが多いということでしょう。

そして、その方法として様々なものが挙げられています。理念の浸透、わかりやすい戦略策定、業務の仕組みづくり、コミュニケーション方法、権限の委譲、人事評価制度…などなど。

しかしながら、厳密に言えば「社員を動かす」というのはどんな手段を講じようとも不可能です。社員はロボットではありませんから、プログラムを作動することによって言う通りに動く、なんてことはないわけです。

ただしくは「社員を動かす」のではなく、「社員が動く」― つまり社員が自ら動きたくなる環境をつくることしかできません。つまり、動かすのは「社員」ではなく「社員の心」ということです。だとすれば、経営トップたる社長の「言葉の重み」は、社員が動いてくれるための決定的な要素に違いありません。

社長が社員の心に響くような言葉を発することができれば、社員はその言葉に感化され、共鳴し、文字通り社長の思いに「響きあう」ように動いてくれるはずです。

では、そのような社員を感化させる言葉を発するためにはどうすればいいのか? この答えが単なる言葉のチョイスや話し方、伝え方といったものではないことは、まともな経営者であれば理解されていることと思います。

もちろん、話が長いとか、くどいとか、話があちこち飛ぶとか、言葉が難しいとか、結論がなく何がいいたいかわからないとか、そういった伝え方は論外ですが、かといって昨今出回っているような「話し方が何割」といった本を読んで社長の言葉に重みが出ることは決してありません。

あるいは「巨人の肩に乗る」などといって哲学者や文学者らの名言を引用してうまく話したところで、社員からしたら「社長はいろいろ勉強してるなあ」とか、「なかなかいいこと言うなあ」と感心する程度でしょう。

このあたりは、勉強熱心な方が陥りがちな点です。いい話、高尚な話、論理構成がしっかりしている話、表現が美しい話…、どれも聞いていて心地いいとは思いますが、そんな「きれいな言葉」で現場の社員が動くほど話は単純ではないということです。

では社員の心に響くような言葉を発するためには、何が鍵となるのでしょうか。

それは、「その言葉が、どの意識レベルで発せられているか?」ということです。伝えたいことが、「志」と言えるぐらい深いものであるならば、その言葉は必ずや彼らに伝わるはずです。

なぜこの事業を軌道に乗せたいのか
 なぜもっと新規顧客が必要なのか
 なぜ業務の仕組みを進化させないといけないのか
 なぜ挨拶が大事なのか

そういった具体的な内容についても、社長が自らの志と結びつけてしっかりとその考え方を伝えれば、彼らはわかってくれるはずであり、もしわからないようであれば、もしかしたら彼らは志を共有できる仲間ではないということかもしれません。

ではどうすれば、そのような「志」レベルの言葉を持つことができるのでしょうか。これは2つのことが重要になってきます。

まず一つ目は、当然のことではありますが、社長が事業に本気で取り組むことです。いい加減な気持ちで事業をやっている社長の言葉は、なにをどうやっても軽く薄っぺらいものになります。本気で動いていない人間が発する言葉に重みが出ようはずがありません。

本気でやっている人は、自分をさらけ出すことができます。小手先のテクニックで相手をコントロールするような言葉ではなく、心の底から湧き出る「手伝って欲しい」という想いが言葉になります。そのような言葉には相手を巻き込む力があるものです。

そして二つ目は、自らの「内なる声」に意識を向け、それを丁寧に拾うことです。本気でやっていれば、必ず自分の奥底から「言葉」が生まれます。それを見過ごさないようにキャッチし、実際に書き出すのです。

いちいち書き出さないといけないの? と思われるかもしれませんが、書き出すことではじめて自分の思いや考えを客観視することができます。別の言い方をすれば、書き出してはじめて自分の考えに気づくということです。

そして、いまの自分の考えに気づけば、それをベースにさらに考えを深めたり、幅を広げたりすることができます。なぜそう思うのか? 本当にそうか? だから何なんだ? そうやって自らの考えを深く、そして太くしていくのです。そうすることで、言葉に重みが増していきます。どうしても伝えたい想いが言葉になります。

現に、名経営者と言われる人にはよく文章を書く人が非常に多いようです。これは、自分の考えを文章にすることで社内外に伝える目的ももちろんあるでしょうが、書くことで自らの考えを深めることができると、彼らはわかっているからでしょう。

本気で動く中で浮かび上がる言葉を書き出し、深める。そうすることで、「本気の言葉」の語彙力が高まっていきます。その言葉が社長の武器となり、会社の財産となるのです。

思いを深め、自らの志に気づき、そして本気の言葉で勝負していきましょう。