【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第202話:「貧乏暇なし」を解消するサービスの打ち出し方

「お客様の要望に合わせることがいいことだと思っていました…」── 加工業を営むS社長が10カ月間のコンサルティングを振り返ってそう言われました。
当社では、クライアント企業が顧客の要望に合わせた特別な対応を標準化して仕組みで廻せる体制づくりをお手伝いしています。
この状態を「外から見たらイレギュラー、中から見たらレギュラー」というように表現しておりますが、当社に相談にお越しになる会社の多くは、「外から見てもイレギュラー、中から見たらもっとイレギュラー」といった状態になられているところが多いです。
「お客様の要望に合わせて、どんな加工も実現します!」といった打ち出し方をされているわけですが、このような完全特注をやってしまうと、業務が複雑となってしまい「忙しいのに儲からない」という状態になりがちです。
新規案件の場合は基本的に「初めての試み」となりますから、ゼロから図面を引いて設計して、材料も発注して、加工方法も考えて、そして実際に作ってみて…というように現場の負担が非常に大きくなります。
また、製造工程においては、ときに失敗して作り直しや修正をしたり、あるいは想定よりロスが出てたりして、見積り時の想定コストをはるかに上回ってしまうということも起こり得ます。(ほとんどの案件がそのパターンだった企業もありました…)
その見積りづくりも手間のかかる作業となりますが、すべてが受注できるわけでもありませんから、その分はタダ働きとなってしまうことも非常に痛いです。
以上のように、完全特注は現場のオペレーションに非常に負荷がかかるわけですが、営業面においても特注は売りにくいという側面があります。
なぜ特注が売りにくいかというと、「なんでもできます」というのはお客様にとってみたら「なにができるかわからない」ということになりがちだからです。
これは、メニューがない料理屋を想定すればわかりやすいでしょう。料理人が「なんでもつくりますよ!」と言ったところで、お客様の方は一体なにを頼んだらいいかわからずに、「じゃあ肉じゃがください…」とありきたりな注文をしてしまう可能性が高くなります。
別に肉じゃがが悪いわけではありませんが、本当はもっと得意料理とか、他の店では出ないようなものもつくれるとしたら、お客様が定番品ばかり頼んでしまうのでは非常にもったいない話です。
「いや、そういうのもいいけど、うちはもっとこんなものとか、あんなものなんかもできるんですよ!」とわざわざ言うぐらいだったら、最初から「お品書き」とか「シェフのおすすめ」というものを用意しておきましょう!という話です。
自社の得意なサービスを「パッケージ化」し、あらかじめメニューとして出しておくのです。もちろん、顧客のニーズに合わせて部分的なカスタマイズをとり入れるのはありです。ラーメン屋での「バリカタ」、吉野家での「つゆだく」はOKということですね。
コアの部分は標準化されたものの組み合わせでこなすことができれば、ゼロから見積もりや設計をすることもないですし、何度も繰り返しやっていくうちに腕もあがっていきます。
そしてなにより、「何を売っている会社か」ということが顧客から見て非常に明確になります。料理屋でメニューと価格をみればどんなお店かイメージがつくのと同じです。
当社のコンサルティングも「特別対応の標準化」という、わかったようでわからない内容なのですが、全10回の工程の中身を明確にすることでどんなコンサルティングをするのかイメージを持っていただくことができていますし、実際のコンサルティングもちゃんと段階を追って実施することができています。
そのように実施内容をパッケージ化せずに、「経営全般なんでもやります!」と言っていたらとしたら、まともな経営者には相手にされないでしょうし、お仕事をいただいたとしてもおそらくお互いにいい結果にはならない可能性が高いと思います。
御社は特注対応や特別対応を「イレギュラー」のままこなして疲れていませんか?
ユニークなサービスをあらかじめ標準化して、中からみたら「レギュラー」で廻していきましょう。