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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第207話:できない社員に足を悩ます社長が意識すべきこと

 

「中川先生、本当にうちのS部長ときたら、いくらやれと言っても全然やらないんです。どうしたらいいでしょう?」── 継続的にご支援している先のM社長が嘆いています。

いつも口だけでやるべきことをやらないし、強く叱ったらシュンとなって下を向いてしまう。ずっと同じ問答の繰り返して肝心なことが一向に進まないとのこと。

「でも結局その状態をずっと許しているってことになりませんか?」そうM社長にお伝えすると、少し考えて「…はい、そのとおりです。やはり役割を見直します」とキリッとした表情でお答えになりました。

 


 

普段経営者の方とお話ししていてよく思うことがあります。それはとにかく多くの方が「人」に意識を向けて余計な悩みを抱えている、ということです。

確かに社員の数が限られている中小企業のおいて、期待した仕事を社員がこなしてくれないというのは切実な悩みであることはわかります。しかしながら、そういった問題のある社員にフォーカスをして、とにかく彼らを教育しようとするアプローチには非常に大きな落とし穴があります。

それはなにかというと、『「人(社員)」にフォーカスするあまり、「タスク」への意識が希薄になる』ということです。経営者が「できない社員をなんとかしよう」という意識で頭がいっぱいになり、「いま会社にとって重要なタスクを完遂させよう」という意識がどこかへいってしまうわけです。

社員を雇うというのは本来は手段です。そして、手段というのは必ず目的をもつものです。しかし、人を雇う目的である「タスク」がないがしろにされ、単なる手段である「人(社員)」のことがずっと議論の中心になっているケースが非常に多く見られます。

経営者が(出来の悪い)社員のことばかり考えているということは、経営者の意識が内向きになっているということです。そうなると必然的に社員の意識も内向きになります。そして、社員が内向きの意識を持つとどうなるかというと、個々の社員が自分の都合を優先させるという傾向が強くなります。

仕事では「誰が、何を、どのように、いつまでに」という4要素を明確にすることが必須ですが、実はこの言い方は間違っていて、正しくは「何を、どのように、いつまでに、誰が」との順番で考えるべきです。つまり誰がやるかは最後でよくて、何をどのようにしていつまでにやるか、そこに経営者は意識を向けるべきなのです。

事業を伸ばすために、経営として「何をいつまでに完遂させるか」を明確に意思決定する。そしてその実行を担う担当部署の責任者にコミット(約束)させる。必ずこの順番で議論をすることです。極論、誰がやったっていいのです。顧客はそんなこと気にしません。仕事を人に張りつける属人化の発想は捨て去り、とにかく顧客と社員のためにやるべきことを期日までにやりきる企業文化をつくることです。

「そんなこと言ったって社員にできるようにさせないと駄目じゃないですか」と言いたい社長もいらっしゃるでしょう。しかしながら、多くの場合そのタスクをできる人間はもうすでに社内に存在します。ただ、年功序列で決めた管理職の能力が低いばっかりに、自分もやらないし部下にもやらせないという事態が起こっているだけだったりするのです。

経営者は「タスク完遂」にこだわる姿勢を崩さず、感情を抜きにしてその管理職に聞きましょう。一体誰ならこれができるのかと。やる気も能力も向上心もない人間に重要タスクを張りつける必要はありません。若くてやる気のある人材にちょっと背伸びをさせてでもやらせてみたらいいのです。そうやってやる気のある人間に仕事を与えていくことで、結果的に人は育っていきます。

もちろん、そんな一部の優秀な社員の力だけに頼っていては組織として強くなりませんから、そのような社員に仕組みをつくらせ、マニュアルをつくり、他の社員を指導させます。それが本来の管理職の役目です。これからの時代、ただ社歴が長いからというだけで管理職にしておくほど企業に余裕はないはずです。

昨今、「人を大切にする会社」が注目され表彰されたりしていますが、その表層だけをみて勘違いしてはなりません。そういった会社は人を大切にするためにも、しっかり仕事を仕組みで回しています。そうでないと業績が上がらず結局は社員を守っていけないからです。「社員を大切にする」とは「社員に気をつかう」ことではありません。

御社では経営陣の会話の主語が「人」ばかりになっていませんか? 事業推進のために必ずやるべき重要タスクの完遂に意識を向けていますか?