「特別ビジネス」の構築で利益3倍化を実現

  • TEL : 03-6822-5181
  • 〒103-0022
    東京都中央区日本橋室町1-11-12
    日本橋水野ビル7階

【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第208話:エースに頼る営業から脱却するための3つの重要ポイント

 

「営業部長に担当を持たせない? それができないから困っているんですよ!」── ご支援させていただいているクライアント企業のH社長のお言葉です。

H社長が代表を務められている別会社において、腕利きの営業マネージャーが大半の売上を叩き出している状況を心配されて相談されました。

こちらが第一声「そんなの簡単ですよ。その営業マネージャーに担当を持たせなければいいんですよ」と笑顔で答えたところ、冒頭のセリフがあったわけですが、もちろんそんなに簡単なわけではありません(笑)。

しかしながら、実際問題としてごく少数のエースに営業を頼っている状態を放置することは非常に経営リスクが高いです。

その理由を端的に言えば、「そのエースが辞めたら会社は終わり」だからです。

そして、これは多くの経営者が経験されていることだと思いますが、そういう辞めてほしくない人物ほど辞めてしまう、ということが実際に起きます。なぜなら「モノを売れる人」はどこの企業でも欲しい人材だからです。

いま「会社」という組織のあり方が見直されつつあります。大企業が終身雇用を約束できず副業を推奨する時代となりました。当然雇われる側においても会社との関係を昔ほど固いものとは思わない人が増えています。

そのような傾向が加速する局面において、腕利きの営業マンがずっと会社の売上を稼いできてくれると考えるのはあまりにも楽観が過ぎるといえるでしょう。

一部の優秀な営業マンに頼るデメリットはまだあります。それは、「その人物のキャパ以上には会社は成長しない」という点です。

これも多くの経営者の方々が痛感されている点だと思います。「だからこそ、その営業マンに他の営業を教育させようとしてるんですよ!」と言われる方も多いと思います。

しかしながら、その教育はなかなかうまく進みません。なぜなら、優秀な営業マンがセールスの現場でやっていることは、とても普通の人には真似できないことだったりするからです。

相手の話に合わせながらも最終的にはこちらの言いたい話にもっていくような高度なトーク術だったり、するどいツッコミにもパッと切り返すことができる地頭の良さだったり、なんとも憎めない愛嬌だったり、何度も修羅場をくぐってきたことで醸し出される人間的な深みだったり…。

当然そういったことを売れない営業マンに教育して授けることはできませんから、「あの場面ではこう言った方がよかった」といった個別具体的な指導をすることになりますが、それはあくまでそのケースにおいて言えることで、別のケースではその助言が生きてこないということになります。

つまり、トップ営業マンがやっていることは、「本人にしか再現できないこと」なのです。

ですから、営業のトップに単に「他の営業マンを教育しろ」と言っても駄目なのです。もともと再現性のないことをやっているのですから、そのやり方を変えてもらうところから始める必要があります。

現に、尋常ではない営業利益を長年上げ続けているキーエンスは、営業が非常に強いことで有名ですが、同社では「営業の再現性」に徹底的にこだわっており、トーク力などの「個の力」で売ってくる営業マンを評価しないといいます。

では、再現性が高い営業体制をつくるために、具体的に何をすればいいのか? これには大きく3つの需要なポイントがあります。

まず一つ目の非常に重要なポイントは、「自社の商品サービスに他社にはない強みをもたせる」ということです。

「え? それは営業のことではないじゃないか!」と思われることでしょう。しかしながら、やはりここがどうしても出発点になります。なぜなら、他社と同じものを提供するならば、どうしても「値引き」や「人間力」や「コネ」に頼る営業になってしまうからです。

この「商品企画・サービス企画」に営業部の力が不可欠です。普段から顧客と接する中で顧客の真のニーズを把握し、そのニーズを満たす上で世の中にある商品やサービスでは至らないところ、不十分な点を見出す。そしてその足りない部分を自社の商品サービスに組み込むことができれば、一部の優秀な人間にしかできない難しい営業から解放され、ルーチンで楽に売れるようになります。

そして、再現性の高い営業を実現するポイントの2つ目は、「セールスストーリーと営業ツール」をつくり込むことです。

セールスストーリーというのは、「何をどういう順番で伝えれば顧客が買う気になるか」を言語化したもので、「セールスのシナリオ(作戦手順)」のようなものです。

何をどのように伝えれば、顧客が真のニーズや困りごとに気づき、そしてそれを解決することができるのは当社の商品・サービスだけだと理解してくれるのか。

その手順を言語化することが、セールスをする上で絶対に必要となります。そして、優秀な営業マンというのはこのストーリーづくりをなんとなく感覚でやれているものです。それをすべての営業マンが腹落ちするようにストーリー化、シナリオ化することが、営業マン全員が結果を出せる「標準化営業」の要となります。

また、そのセールスストーリーに基づいてセールストークを組み立てるわけですが、営業マンの中にはうまく論理立てて話せない人間も多いです。そこで営業ツールの作り込みが非常に重要となります。相手に訴求したいポイントを順番どおりに資料にまとめておけば、それを紙芝居のように見せていくだけで成約率の高いセールスが実現可能となります。

そして重要ポイントの3つ目は、「営業マネージャーが営業マンの行動を徹底管理する」ということです。

これは、「誰がどこへ行った」という程度の粗さで把握することではありません。各営業マンが何の目的で顧客にコンタクト(訪問やZOOM面談)するのかを営業マネージャーは事前に把握します。そして、結果を当日中に本人に確認し、現状を詳細に把握するとともに、必要であれば作戦の軌道修正を加えていきます。言うなれば「オーケストラの指揮者」のような役割をマネージャーに担わせるのです。

また、そういった各営業マンの行動を数値化することも不可欠です。そうすることで、ある営業マンに結果が出ないのは行動の量の問題か質の問題かを把握することができます。

他にも営業マネージャーが日々やるべきことは多々ありますが、重要なポイントとして3つお伝えしました。こうやって見てみると、営業マネージャーが営業部全体の最適化のためにやるべきことは非常に多く、かつとても重要であることが理解できると思います。

営業のマネジメントは高度な専門職であり、それはいち営業マンとして成績を上げる能力とはまったく異なります。それを兼任させてしまうと必ずどっちつかずとなり、やがてはマネージャー自ら数字を挽回しようとして結局バラバラの営業に戻ってしまうのです。

御社では営業マネージャーにマネージャーの仕事をさせていますか? 天才肌の営業マンに肩書きだけつけている状態になっていませんか?

チームプレーには野球と同じで監督の役割が最重要となります。営業マネージャーに本来の仕事をさせて、チーム全員で成果を共有する喜びをぜひ味わってください。