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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第215話:経営者が事業計画を作る前にやるべきこと

 

「事業戦略なき事業計画…まさにうちのこれですね…」──  以前個別相談にお越しになったM社長は、ご持参いただいた自社の経営計画書をポンっと机の上において苦笑されました。

その経営計画書には、まず「私たちのミッション」というページで始まり、次に今年度に注力するテーマが書かれています。どれも曖昧で精神論的な内容です。そして最後に右肩上がりの3ヵ年の売上利益計画が並んでいます。

その数字をどうやって達成するか…その施策については「新規営業とマーケティングによって」とは書いてありますが、具体的な説明はなく、数字の根拠も不明瞭です。

M社長は、これまでの「単なる努力目標を積み上げるだけの事業計画」ではもはや通用しない(つくっても意味がない)と思い立ち、根本的に経営を変えたいと当社にご相談に来られたのでした。

このM社長のように、単なる精神論や根拠のない数字の羅列しか書かれていない事業計画を「意味のないもの」とわかっている社長はいいのですが、なかにはそういったものを「社員に落とし込む」と張り切っている経営者の方もよくいらっしゃるので困ったものです。

事業計画をつくる上で、あるいはつくる前に経営者がとことん考えるべき、非常に大事なことがあります。それは「事業の目的」です。

事業の目的とは、簡単に言うと「誰に何をしてあげるのか?」ということです。「この事業は誰のどんなニーズや困りごとに対処するものなのか?」とも言えるでしょう。

この事業の目的がありきたりなもの、すでに十分世の中にあるものであれば、その事業はお客様からすれば「間に合っている」ということになりますから、その事業の存在意義はありません。

例として歯医者の場合を考えてみましょう。ある歯医者の事業の目的を単に「歯を治療する」ということで考えていたとしたら、当然ながら歯を治療するだけのごく普通の歯医者が出来上がることになります。これでは、その地域によほど歯医者が少ないか、ひどい歯医者ばかりでないと事業はうまくいかないでしょう。

そんな「なんの決め手もない事業」について、「顧客と社員の物心両面の…」といったふわっとした理念と、なんとなく伸びていく数値計画が入った事業計画をつくったところで意味がないのは言うまでもないことです。

事業計画を考えるにあたっての最初の大事な出発点は、「自分たちはそもそも何がやりたいのか?」という、非常に根源的な問いでなければなりません。

経営者や社員が「わたしたちはどうしてもこれがやりたい!」という、内面から湧き上がる想い。そしてその想いを抱いている理由。これらをとことん突き詰める必要があるということです。

たとえば歯医者の場合、「虫歯を治療するだけの歯医者では駄目だ。どうしたら虫歯にならないか、しっかり指導できる歯医者が必要なんだ!」とか、あるいは、「認知症の原因は実は歯の病気から来ることが多い。高齢になっても元気に生きるためには、もっと歯を大切にしないといけないんだ!」といった自分たちの想いを事業の出発点にするということです。

そうすれば、事業の目的は単に「虫歯を治す」ということではなく、「歯の予防治療を通じて高齢者の健康を支える」ということになり、そこから様々なサービスを想定することができます。

これはどんな事業でも同じことです。散髪屋においては、事業の目的を「髪型を整える」とするか「お客様の魅力を最大限引き出す」とするかで、実際のサービス内容はもちろん、社員の意識もまったく別のものになるはずです。

もちろん、単なる「想いの言語化」だけでは事業戦略にはなりません。それを事業として形にするためのグランドデザインが必要ですし、そのグランドデザインを現実化するためのオペレーションも詰めないといけません。

しかし、出発点としての内発的な想いである「自分たちの事業の目的」がパシッと決まっていなければ、その先の構想や計画はすべて力を失うことになります。

経営者がまず社員に落とし込むべきものは、経営計画書ではなく、そもそもの起業の想いたる事業の目的となります。何事も「なんのために」が大事なのです。

皆さんの会社では、想いを出発点に事業をつくれていますか? そしてその想いは顧客に刺さるものになっていますか?