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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第231話:社長が持つべき、儲かる事業をつくるための重要思考

 

「中川先生は普段どんなことを勉強されているのですか?」── これまで経営者の方からたびたび聞かれた質問です。

経営コンサルタントならいろいろと経営について学んでいるだろうと思われてのご質問だと思いますが、私は経営に関して特にドラッカーやシュンペーターといった学者の考えを学んだことはありません。(本はいくつか事務所の本棚に並んでいますが…)

強いて言えばミスミ勤務時代に当時社長だった三枝匡氏から学んだ考え方はありますが、それにしても学者がいうような理論めいたものではなく、経営現場での実践を通して叩き込まれた、痛みを伴う学び(教訓)といったものです。

私がクライアント先企業の経営者にお伝えしていることは、これまでに自分が事業責任者としてリードした、あるいはコンサルタントとしてご支援した、数多くの事業変革の現場から得た学びを体系化したものです。つまり、自分でやってみて成果が出たことだけをお伝えしています。

ただ、近年はより本質的な学びを得たいと思い、武術の稽古を通して戦国時代の武士の考え方(いわゆる武士道)というものを学んでいます。

なぜわざわざそのようなものを学んでいるかというと、武士の考え方には経営者やリーダーが心得ておくべき本質が詰まっているからです。

たとえば、戦国時代の武士が腰にぶら下げていた長尺の刀を「太刀(たち)」と言いますが、この太刀という名前は「断つ」から来ていると言われています。

武士は「断ち切ること」を非常に大事にしていたため、自らのもっとも大切な道具にその名前をつけて常にリマインドできるようにしていたわけです。

江戸時代の平和慣れした武士と違って、戦国時代の武士は常に「生きるか死ぬか」の瀬戸際に立たされていましたから、生き延びるためには「決断する」ことが求められたのでした。

何を決断していたのか…それは「何をやらないか」ということです。

たとえば「誰を斬らないか」── 誰も彼もを相手にやみくもに斬り合いをしていたのでは命が持ちませんし、弱い相手ばかり斬っていても立身出世は果たせませんから、武士は誰を相手にしないかを定めていたといいます。

また彼らは、自分の仕える大将が出世する見込みがないと思ったら、さっさと鞍替えをして強い武将のところに身を寄せました。勝ち馬に乗るということですね。自分がいくら必死で頑張っても弱い大将に仕えていたのでは出世は望めませんから。

戦国時代の武士の平均寿命は40年程度と言われています。そのような短い人生の中で無駄なことをやっている暇などないのでしょう。犬死せず大事を成し遂げたい。そのためには正しく決断し、自分のやるべきことに集中する。このような生き方、考え方は現代のリーダー論にも大いに当てはまるものです。

「勝ち馬に乗る」という考え方を経営に当てはめると、「儲かる事業モデルを選ぶ」ということになります。社員一丸となっていくら日々の仕事をせっせと頑張っても、やっていることが儲からないことであれば、せっかくの努力が無駄になります。

儲からない事業の代表例については当コラムでも度々お伝えしているとおり「作業」を請け負う仕事です。ただDMを封筒に詰めるとか、ただ髪を切るとか、顧客の指示通りに加工するとか、ただ会計処理をするとか…そういった「手足」を売る仕事はただそれをやったのでは儲かりません。そこに自社ならではのプラスアルファが必要となります。

自社の事業が構造的に儲からないものになってしまっている場合、「このままでは駄目だ…」と悩んでいる時間こそがまったくの無駄であり、真っ先に断ち切るべきものです。悩んでいる暇があったら考えて行動する。そうでなければ自分たちが市場から斬られてしまうだけです。

もちろん事業モデルについてのみならず、経営者が断ち切るべき問題はいろいろあります。

売れない商品をずっと同じ手法で販売しようとしている…

売っても赤字になるだけの利益の取れない商品を売っている…

属人的な仕事のやり方のため社員の能力にばらつきがある…

仕事が仕組み化できていないためミスが多くクレームが絶えない…

営業マンが事務作業ばかりしていて一向に新規を取ってこない…

こういった問題が継続的に起こっているとしたら、それを放置する理由も余裕もないはずです。

優秀な経営者は、武士のように太刀を携帯していなくとも、「断ち切る力」は常に振るっています。ロジックでバッサバサと合理的な経営を進めます。なぜそうするか。それは「想い」を達成するためです。

経営者としてこんな世界をつくりたい。こんな社会を実現させたい。お客様に喜んでもらいたい。そんな想いを一刻も早く実現させたいからこそ、無駄なこと、結果が出ないことをやりたくないのです。

悪い流れは自ら断ち切る。それが経営者として持つべき心構えだと私は思います。