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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第232話:貧乏暇なしだったH社の事業変革

3年前に当社のコンサルティングを通して事業変革を果たしたH社長に岐阜駅までおいでいただいて、わずかな時間でしたが出張の合間に食事をご一緒することができました。

「いや本当にいろいろあり過ぎて大変でしたよ…」── 岐阜駅のとんかつ屋でノンアルビールをぐいぐいあけながら、H社長はこれまでの挑戦を振り返ります。

同社はもともと自動車部品製造のための治具を製造していましたが、顧客からの度重なる設計変更依頼に振り回されていました。

創業後過去最高売上を受注するも、利益はぜんぜん残らず、社員は残業続きで疲弊。社長自身も「もう会社をやめたい」と言いたくなるような状況で、典型的な「貧乏暇なし」の状態でした。

これは自動車業界ではよく見られるパターンで、業界ピラミッドの下へいけばいくほど仕事の条件がキツくなり、顧客に振り回されることになります。

しかしこれは自動車業界に限った現象ではありません。実際、当社はこれまで様々な業種業界の企業に関わらせていただいていますが、肌感覚として「忙しいところほど儲かっていない」という実感があります。

なぜ忙しい会社ほど儲かっていないのかというと、やはりその仕事の中身が「作業の請負だから」ということに他なりません。付加価値を生む「企画」の部分は顧客が握っているために、自社がいくらがんばっても作業賃レベルのお金しかもらえないという構図です。

そして、顧客からひっきりなしに舞い込む受注(作業依頼)で忙しい会社によく見られる現象があります。それが、冒頭のH社長も経験された「モチベーションの喪失」です。

なぜモチベーションが失われるのか。その理由は単純で、いくら仕事を頑張っても「報われない」からです。

ビジネスでお客様から仕事が来ることは、本来はとても喜ばしいことのはずですが、連日ひたすら作業に終われる現場の社員たちにその喜びはありません。なぜ喜べないかというと2つの意味で彼らが報われないからです。

まずひとつめは「金銭的に報われない」ということです。作業的な仕事は付加価値が低いですから、たくさんの数量をこなしてやっと黒字になるといった企業が多く、社員の給与を上げていく余裕がありません。

給料は上がらず、仕事ばかりが増えていくのですから、社員からしたら「会社は自分に報いてくれない」という心情になります。

そして二つ目は「精神的に報われない」ということです。これは「顧客から感謝されない」という心情です。

顧客は往々にして「仕事を出してやっている」という上から目線で、納期や価格面でさまざまな条件を突きつけてきます。そしてその条件を必死の思いでこなしても、顧客から感謝の言葉がくることなどほとんどありませんから、彼らは「顧客に喜ばれている」という実感が持てないのです。

こうして、作業的な仕事の下請けで忙しい会社の社員は、「金なし暇なし喜びなし」の状態となります。

一方で、儲かっている会社も当然ながら現場は非常に忙しかったりしますが、多くの場合社員は忙しいからといって精神が疲弊することはありません。それは金銭的に報われるということもそうですが、なにより精神的に満たされるからです。

どれだけ忙しくても、それは自分たちが仕掛けた結果です。やらされ仕事ではありません。そして、やればやるほど顧客が感謝してくれます。自分たちの存在意義を感じることができます。文字通り「やりがい」がある仕事となります。

忙しいのに心が満たされる── これは経営者が目指すべき最高の状態です。社員がこのような心持ちで仕事を頑張ってくれたら、当然その会社はうまくいきます。

ここまでお読みいただいた方はお気づきのことと思います。よく社員のモチベーションが問題となりますが、それを解決しようとして小手先な試みをやってもしょうがないということです。

社員のモチベーションを上げるための唯一にして最高の方法は、結局のところ「儲かる事業をやる」という経営の原理原則に戻ってくるのです。

冒頭のH社長は、これまでの治具やラインの設計で培った知見を生かして「中小企業の製造現場の『“半”自動化』事業を立ち上げました。人にもお金にも限りがある中小企業を救う事業です。

立ち上げから大きな反響があり、3年経ったいまでは問い合わせがひっきりなしに入ってきます。利益率も自動車案件と比べてちょうど3倍です。なにより「現場に行くのが楽しい」とH社長は言います。自分の創った会社を辞めたいと言われていた状態とは真逆になっています。

もちろん、このような事業変革は簡単なことではありません。現にH社長は力を込めて言われました。「本当に覚悟が要りましたよ」と。

聞けば、「なにが自動化だ!」と言って社員が何人も会社を去っていったり、コロナ禍で自動車案件が激減して規模を縮小せざるを得なかったり…。

「でも“半”自動化の軸は一切ブレませんでしたけどね」と力強く話すH社長。

そんなH社長の事業変革ストーリーは4月22日の「コンサルEXPOオンライン」にて直接お聞きください。私とH社長で対談をします。どんな業種業態の経営者にも非常に参考になると思います。

いま様々な環境変化が起きています。作業的な仕事はどんどん一層されていくでしょう。もう根性論での経営は通用しないことは目に見えています。

心から顧客に感謝され、社員が金銭的にも精神的にも報われる。そのような経営を目指すしか企業が存続する道はありません。

御社はその状態の実現に向けて行動を起こせていますか?