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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第247話:成功している企業が顧客に語っていること

「最近は映画もネットフリックスばっかりですねえ。1.5倍速で観れるんですよー!」── お仲間の経営者であるM社長は、最近はスマホで映画三昧とのこと。

少し前に本屋で見かけた「映画を早送りする人たち」という新書のタイトルどおりの人が目の前にいたわけですが(笑)、これだけ簡単に観られるコンテンツが氾濫すると、確かに早送りで観たくなる人の心境もわからないではありません。

気になってその新書を本屋でパラパラと立ち読みしてみると、やはり映画を早送りで観てしまう人の言い分としては、「たくさん観たいものがあるから、時短でさっさと観てしまいたい」とか「早送りの方が(時間の)コスパがいい」といったことが書かれていました。

これは映画というものが「鑑賞」するものではなく「消費」するものと捉えられているわけで、目的が「物語(ストーリー)に浸る」ことではなく「情報(あらすじ)を知る」ことになってしまっているということでしょう。

なぜここでこんな話をしているかというと、企業が顧客に語っている言葉もストーリーではなくあらすじになっていませんか?ということを言いたいからです。

顧客にものを買ってもらうためには、顧客の心を動かさないといけません。これはなにも、よく言われる「顧客満足ではなく顧客感動!」みたいなことを言いたいわけではなく、人に何かを決断させる場合に論理(ロジック)だけでは難しいからです。

なぜ論理だけでは人の行動を促すことができないかというと、これは人の脳の性質によるものです。

ちょっとややこしい話になってしまうのですが、人が合理的な判断を下すのは脳の「大脳新皮質」という場所を使います。新皮質というぐらいですから、ヒトのような高等生物が持つ脳の特徴となります。

ところが、人の「行動」を司るのはこの新皮質とは別の場所で「大脳辺縁系」という部分になります。そして、ここが重要なポイントなのですが、この「大脳辺縁系」というのは、言葉による説明では刺激されないのです。

つまり、相手に「説明」だけ与えても、「理解」はしてもらえるが「行動」はしてもらえない。

では何を伝えれば相手は行動してくれるのかというと、それは「説明」ではなく「感情を動かす言葉」であり、それはすなわち「物語」ということになります。あらすじではなくストーリーを伝えなければいけないのです。

自社の事業内容、商品やサービスの特徴、価格、納期、取引条件…これらはすべて説明であり情報でありあらすじです。これらを聞いても顧客は行動してくれません。「いいものだというのはわかるんだけど、なんかしっくりこない…」といった反応がいい例です。

アップルが時価総額で世界第一位になったのも、スティーブ・ジョブズが製品の機能ではなくストーリーを語ったからにほかなりません。彼らは、自分たちがやりたいことは「世界を変えること」だと繰り返し語りました。そして、「人と違う考え方に価値がある」との信念を製品に反映させました。そんな彼らの物語が多くのファンを生み出しています。

ここで言いたいことは、皆さんもアップルのようなブランディングをやるべき、といったことではありません。そうではなく、皆さんが「なぜこの事業をやるのか」というストーリーが必要ということです。

もちろん、そのストーリーが自分たちがやっていることとかけ離れたものだとしたら、ただの耳障りのいい絵空事となってしまいます。世にいう「理念経営」がうまくいかないのも、言っていることとやっていることに乖離があるからです。

自分たちの物語が自社の商品やサービスに包含されている必要があります。いうなれば理念ではなく「品念」が必要なのです。

商品の自慢話ではなく、相手の立場に立った共感ストーリーを語ることができれば、顧客はそれを早送りで聞きたいとは思わないでしょう。その世界観に浸りたいはずです。そうなればより動物的、本能的にそれを「欲しい」と思ってくれます。

これは自社の社員に語るべきことも当然同じです。「あらすじ」だけ語っていても彼らの心は動きません。そうなれば彼らも「条件」で動くことになります。彼らを真に行動に導くものもやはり物語だということです。

御社は顧客や社員に語るべき物語を持っていますか? あらすじだけ語って聞き飛ばされていませんか?

人の心を繋ぎ止めるのは、いつだってひとつの物語です。