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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第258話:社長が認識すべき「経営の偏り」

 

TV番組の「プロフェッショナル」はご覧になったことがある方も多いと思いますが、番組の最後の「プロフェッショナルとは何か?」という質問の答えがみんなバラバラで面白いですね。

同じように、名経営者と言われる方々に「経営の鍵は何か?」と聞いたとしたら、おそらく皆さん違うことをおっしゃるのだろうと思います。

「経営者の質だ!」

「戦略だ!」

「組織マネジメントだ!」

「時流を読むことだ!」

「運だ!」

…ありとあらゆる声が聞こえてきそうですが(笑)、いろいろな意見を集約して一言で表現するとしたら、それはもしかしたら「バランスを取ること」と言えるかもしれません。

「ん? なんのバランス?」と思われるかもしれませんが、経営に限らず、私たちの住むこの世界は矛盾に満ちた世界ですから、相反することのはざまでうまくバランスを取ることが非常に大事になってきます。

バランスを取るというのは、言い換えると「中庸を取る」ということになります。この言葉が古来から賢人が大切にしていたものであることはご存じだと思います。

もとは儒教から来ている言葉だと言われていますが、日本でも戦国時代の武将はこの「中庸」ということを非常に大切にしたそうです。

ちなみに「中庸が肝心」というと「何事もほどほどに」とか、「行き過ぎず中ぐらいがいい」といった意味で使われることが多いですが、中庸の本来の意味はそういうことではなく、「何事も偏ってはいけない」ということです。万物は陰陽にわかれますが、陰も陽もちゃんとみないといけないということですね。

経営においてバランスを取ることといえばどんなことがあるでしょうか。

たとえば事業戦略において「時流に乗る」という側面に偏りすぎると、他社と同じように流行りを追いかけてしまい、やがてブームが去ると共倒れになってしまいます。タピオカ現象ですね。この場合、対極にある考え方は「時流に流されない強みを作る」ということになります。どちらがいい悪いではなく盲目的に偏ってはダメということです。

バランスを取りたい考え方は他にもいろいろあります。たとえば、企業の競争優位性を高めるアプローチとして、「戦略的ポジショニング」に頼る考え方と「業務遂行力」に頼る考え方があります。

前者の「戦略的ポジショニング」に頼るというのは、簡単にいえば「作戦で勝つ」という考え方です。差別化のコンセプトを練り上げ、ポジショニングを明確にし、競合とのガチンコ勝負を避ける。戦国武将でいうと黒田官兵衛のイメージです。

一方、後者の「業務遂行力」に頼るというのは、ひたすら自社のオペレーションを磨き込んで組織の腕を上げる考え方です。企業でいうとトヨタの戦い方です。武将でいうと…57戦連勝、一人で突撃しても絶対に負けなかったと言われる本多忠勝とかでしょうか。

戦略性が「頭脳」、業務遂行力が「足腰」だと考えると、どちらかに偏っては意味がないことは明らかでしょう。劉備元徳と諸葛亮孔明はお互いの存在があったからこそ活躍できたわけです。「武神」と呼ばれた武田信玄も、その圧倒的な武力は「風林火山」で知られる武田兵法があってこそ生かされました。

ここで、経営者の方は自社の強みが「戦略性」か「業務遂行力」かどちらに傾いているか振り返ってみてください。

「え、どっちも駄目だ…」と思われる方も少なくないかもしれませんが、意識としてどちらに偏っているかを観ることが重要です。

社長から社員への普段の指示出しが「オペレーションに関すること」に偏っている場合は要注意です。

オペレーションに関する指示とは、営業に対して「訪問件数を増やせ!」とか、製造現場に対して「無駄を省け!」とか、店舗スタッフに対して「もっと笑顔で!」といったものになります。

もちろんそれらが悪いわけではないのですが、そのような「現場レベルの改善」だけで事業がうまくいくほど昨今の経営環境はぬるくはありません。やはり戦いには相手を上回る「知略」が必要であり、それを考えるのは社員ではなく経営者の役割なのです。

業績低迷にあえぐ多くの企業においてやりがちなことが、「現場社員の頑張りだけでなんとかしようとすること」です。しかし、社員の足腰をいくら鍛えても作戦を誤れば彼らを犬死させてしまいます。

日本は家電や液晶、半導体といった業界で、諸外国に散々な負け方をしてきました。そしていまは自動車産業も黄色信号が灯っています。負け戦の要因はさまざま指摘されていますが、オペレーションがひどかった訳ではないでしょう。やはり経営戦略で失敗したのです。

他社との違いをつくれない経営体質を「日本人の保守的な気質」と片付けてしまうわけにはいきません。特にリソースに限りのある中小企業においては、戦い方で「違い」をつくることは必須です。

御社では、自社の長期的繁栄を実現するために、自社の「戦略性」に目を向けていますか? 社員の頑張りだけに頼っていませんか?