「特別ビジネス」の構築で利益3倍化を実現

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【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第269回:社員を大切にしたい社長がやってしまう間違い

 

「社員を大切にする会社」という言葉をときおり目にします。「社員を大切にしない会社が顧客を満足させることなどできない。顧客満足(CS)より先にES(社員満足)だ」なんて主張もあったり。

私はそういった主張を聞くたびに違和感を覚えます。

そんなに社員を大切にしたいなら、給料を倍にしてやればいいじゃないか…

そんなに顧客を大切にしたければ、値段を半額にしてやればいいじゃないか…

そんな風に思ってしまうわけです。

もちろん、まともな経営者ならそんなことはしませんよね。なぜなら、企業は営利を追求することでしか存続できないからです。

キーエンスの給料がすごいと聞いても誰も同じだけの給料を支払わないのは当然で、自分の会社では社員にそんなに払ったところでそれに見合うだけの付加価値を生み出さないことがわかっているからです。つまり、経営者は単に得られる付加価値と経費のバランスを取っているだけのこと。

これは、養鶏場ビジネスを想像したらわかりやすいと思います。「うちはひよこの時からいい餌と水を与えています」と言っている経営者がいるとして、その目的は「(高く売れる)いい卵を産んでほしいから」であって、「鶏を大切にしたいから」ではないですよね。

しかも、餌のグレードを上げれば上げるほど卵の売価も上げられるかというとそんなことはないですから、経営者はちょうどいいバランスを見極めるはずです。

すなわち、「鶏にいい餌を与えている経営者=いい経営者」というわけではない」という当たり前の結論に帰着します。

ですので、世の中で賞賛される「社員を大切にしているように見える行為」はあくまで利潤を追求する中で経営者が戦略的にやっていること、でしかないのです。

こんなことを書くと、「いや、私の知っている経営者はそんなことはない!利益とかじゃなくて本気で従業員の幸せを考えてますよ!」と怒ってきそうな人の顔が2、3浮かびますが、それは寝言です。なぜなら、企業が長期的利益を生み出せるならば社員に報いることも容易ですが、その逆はないからです。

要は、「利益を生み出せる経営」が「社員を大切にできる経営」だということです。

「いやいや、金だけで人が動くと思ったら大間違いですよ」と言ってくる人もいそうですが、それも寝言です。なぜなら、企業が長期的利益を生み出すには「金だけ」ではなんともならないからです。

継続して利益を生み出せるような強い企業をつくるために、重要なことが3つあります。

まずは、そもそもの出発点として「企業の存在意義」を明確にする必要があります。つまり「この会社は何のために存在するのか」「私たちは何を実現するために頑張るのか」といった、会社の原点です。

言い換えれば経営者の「志」や「理念」となりますが、これはよくある京セラの理念のコピーのようなものではなく、もっと具体的な想いです。

こういった経営者の本音の想いが明確になっていれば、社員としてもこの会社で働くべきかどうかの判断基準となります。そこに共感できるならば内発的動機につながりますし、共感できないなら他の会社を当たることもできます。これも「社員を大切にする」ことにつながります。

その次に大事なことは、そういった想いを実現するためにも、会社が儲かる戦略を立てることです。

想いは強くても戦略が機能せずに潰れていく企業はごまんとあります。他の企業ではなく自社を選んでもらうためには独自の戦略が必要です。そしてそれを打ち出すのも、それを回せる組織をつくるのも社長の仕事です。社員にはできない社長ならではの仕事をすることこそ、社員を大切にすることにほかなりません。

そして3つめはやはり「儲けた分はちゃんと社員にも還元する」ということです。

これは社長にいい人になっていただくことを推奨しているのではなく(笑)、戦略的にぜひそうされた方がいいと思うからです。

いまや社員を採用するコストは昔と比べ物になりません。「普通の会社」ではいい人どころか普通の人も採れない時代です。また、せっかく育てた人材が辞めることは会社にとって大きな痛手であることは言うまでもありません。ですから、「しっかり儲けて社員に還元する」というサイクルをつくることが、今の時代、企業存続のために欠かせない考え方となります。

以上、結局のところ、経営者がやるべきことは「真っ当な経営をすること」に他なりません。昨今の「社員を大切にする」というより「社員に迎合する」ような小手先の手法にとらわれず、社長にしかできない仕事をしっかりとやっていきましょう。