【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第287話:儲からない会社が持っている「安売りメンタル」とは

商売の秘訣は「いかに高く売るか」です。
と、私が断言すると少し嫌な気分になったり、違和感を感じたりする人も多いのではないでしょうか。そんなことをしたら罰があたるよ…と思われる方もいるかもしれません(笑)。
長年のデフレで「安い国ニッポン!」となってしまった今の状況ではそのように思う人が多いのも致し方ないことかもしれません。ですが、もし自社の社員がこのように「高値は悪」と思ってしまう人間ばかりだとしたら非常にマズイです。
なぜなら、高い値段をつけられるかどうかがビジネスの成否を決める分かれ道だからです。
「トップラインを上げる」という言葉がよく使われるように、多くの会社が売上を伸ばすことを目標にしますが、売上と同様、いやそれ以上に大事な指標があります。それが「粗利率」です。
粗利率は「事業の強さ」を示します。言い換えると、粗利率はその事業の「付加価値の高さ(低さ)」を表す指標です。
売上高だけにこだわると前述のような「安売りメンタル」の社員はすぐ値段を下げて売上を取りに行ってしまいます。そうなると会社は「忙しいけど儲からない」という状態になりいずれパンクします。
また、業界に同じような安売りメンタルな会社は必ず存在しますから、価格の低さで勝負する体質から抜け出さないといずれ彼らとの「安値合戦」となって共倒れとなります。
このような悪循環に陥らないために経営者がやるべきことは、自社の社員に「高売りマインド」を強制することです。
「我々は他社とは違う。決して安売りするな」と。
もちろん、単に値段を上げるだけだと成約率が大幅に落ちて売上が下がり、結果粗利の総額も下がってしまいます。しっかり値段をつけて、かつ売り切ることが大事であり、そこまで考えることが「高売りマインド」です。
高く売るためには当然なんらかの付加価値を提供する必要があります。安易に価格を下げることに逃げず、経営者と幹部がとことん考える。これが高収益企業になるための基本思想となります。
つまり「高売りマインド」とは「価値売りマインド」と同義語ということです。
ではどうやって付加価値をつけるか? これはいろいろとやり方はありますが、勘違いしがちなのが、いい材料を使ったり、つくるのにすごく手間をかけたりというように、「コストをかけること」こそが付加価値を上げることだと思ってしまうという点です。
コストをかけたものは確かに値段は高くなるのですが、それと「粗利率」を上げることとは無関係です。コストは安くてもそこに付加価値を乗せれば粗利率を上げることはできますし、逆にコストが高くても付加価値が低ければあまりマージンは乗せられません。
では何が付加価値となり得るのか…? 材料代や人件費、外注費などには計上することができないものとなると、残るは「無形の情報」です。アイデア、ノウハウ、コンセプト、ブランド、ストーリー、感性…こういった目に見えないもの、カタチのないものが付加価値となります。
例えば商品やシステムなどの「設計」の良し悪しは、それにかかった時間(=人件費や外注費)に比例するのではなく、その背景にある思想や視点や他にない切り口といったものに左右されるわけです。
そういった「隠れた価値」をしっかり目に見える形に変えることで顧客の認識は大きく変わる余地があります。いい材料を使うにしても、価値をもつのはその材料の良さそのものではなく、その材料の良さを伝えるストーリーの方だということです。
ビジネスは物理空間ではなく情報空間での勝負ということの肌感を高めることが、高収益事業をつくる上でのポイントです。