【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第138話:利益率の低い会社が持つ残念な思考

「単価のつけ方って理屈じゃないところがありますよね~」―― 長年ご支援させていただいている会社の社長と飲みながら話していたときに、その社長がふとこうおっしゃいました。
曰く、いろんなことをあれこれ考えるよりも、「えいや!」で高い価格をつけちゃえばいいと…。
世の中の多くの会社が、「相場」の価格で自社の商品やサービスを売っています。「よく売れている競合商品の価格が1万円だから、うちは9800円にしよう」とか、「市場価格がだいたい5万円で、うちのはいい素材を使っているから少し高い5万5千円にしよう」…といった具合です。
これに対して、冒頭の社長が言っていることは、相場が5万円なのに、「えいや!」と10万円つけてしまう考え方です。
そう聞くと、「そんな何も考えないで高い価格をつけたところで売れないだろう」と思われるかもしれませんが、この社長が言われていることは案外値決めの本質を言い表しています。
実際、当社がこれまでお付き合いしてきた経営者の方々の中でも、しっかり儲ける方はあっさり「倍ぐらいの値段で売りたいなあ~」なんて言いながら、本当にちゃんと倍の値段で売れるようにしてしまいます。
こういう方々に共通する考え方があります。それは「倍の値段で売れるか売れないか」を考えるのではなく、「倍の値段で売るためには何をしたらいいか」と考えるということです。
ここは非常に大事なポイントです。市場価格に合わせるのではなく相場の2倍や3倍の価格で売るためには、当然ながら普通の売り方で売れません。世の中の多くの人が持つ発想から大きく外れた考え方をしていく必要があります。つまり、えいや!と思い切った高い価格をつけることを「先に決める」ことで、ある意味強制的に自分たちの発想の枠を崩していくことができるというわけです。
反対に、この「自分たちの発想」で価格を考えてしまうことが儲からない原因だったりします。特に社員の方々が値段を考えるとこういうことになりがちです。
当社でクライアント企業に対して商品やサービスの値上げをご提案した際に、社員の方々がよく口にされることは、「そんな価格で絶対に売れない」、あるいは「値上げしたらお客様に悪い」というものです。結構頑なに拒否反応を示されることもしばしばです。
こういった反応の背景にはどのような感情があるかというと、おそらくは以下のようなものではないでしょうか。
「高い」と言って断られるのが嫌だ…
既存のお客様に対して気まずい…
自分と同じようなお客様を大切にしたい…
つまり、発想の起点がすべて「自分」になっているということです。自分が傷つきたくない、自分が気まずい思いをしたくない、自分が共感を持てる顧客層を相手にしたい…こういった発想が商売の幅を狭めてしまうことになります。
商品やサービスの内容や価格を考える際に、このように「自分」を基準にしていてはビジネスは広がりません。「自分がいいと思うもの=いいもの」という残念な発想を捨てる必要があります。
世の中には、高額で、かつ一般の人にとっては価値がわからないようなものが数多くあります。例えば国際線のファーストクラスです。ただ移動するだけ、かつエコノミーに比べるとビジネスクラスでも相当快適なのに、わざわざそれに数十万円追加してファーストクラスに乗る人が多数存在します。
あるいは、百貨店の「外商顧客」と呼ばれる人々も特殊です。百貨店に行けばいろんなものが実際に見て選べるのに、自分からは滅多に出向かずに外商員を自宅に呼びつけたり、あるいはお店に行ってもVIPルームに商品を持ってきてもらったり…。
いずれの例も、世間一般の人たちからすれば「普通」ではない人たちです。人数的にはかなりマイナーでしょう。しかし、こういった特殊でマイナーな人たちが収益面ではメジャーになるというのが実態です。
国際線の長距離路線では、ビジネスクラスとファーストクラスを合わせた、いわゆる「プレミアムクラス」が全収益の7割以上を占めると言われています。内訳的にはビジネスクラスの方が多く占めますが、ファーストクラスという非常に高額なクラスがあるから、ビジネスクラスが売れやすいという実態もあります。また百貨店に関しては、外商顧客が全売上の6割を占めるというデータもあります。
いずれにしても、普通の人にはピンとこない商品やサービスをありがたがる人たちが、収益の柱になっているということになります。
この事実から言えることは、多くの人々が良いと思う商品やサービスだけを考えていても駄目ということです。
単純な話、お金を持っている人をターゲットにすることは商売の基本原則です。それは直接的な収益面や売りやすさのメリットだけではありません。そういった、上位クラスを対象としたビジネスをすることで、自社のサービスレベルや社員の意識レベルも向上するという非常に大事なメリットも得られることになります。
そして簡単な話が、高額な値段をつけてみて、もし全く売れなかったらやめればいいだけの話です。冒頭の社長が言う通り、理屈抜きにやってみたらいいのです。
「一般」より「特別」、
「普通」より「特殊」、
「まとも」より「稀(まれ)」、
「正気」より「狂気」…
自分たちの理解も追いつかないぐらい外れたことをやっても、それを欲しいという人は必ずいます。というより、そんな外れたものを「よく考えてみたら、それ欲しいなあ!」と思わせるようなセールスストーリーを捏造することが、儲かるビジネスを展開する上で求められるのです。
御社では社員がピンとくる価格設定で落ち着いていませんか?
思い切って高価格に攻めることで、ビジネスは激変します。