【経営革新コラム】 儲かるキラーサービスをつくる社長の視点 第222話:社長が叶えてはいけない「社員の願い」

1月4日の仕事始め、初詣に訪れた神社には、社員を引き連れて初詣に来られた経営者らしき人の姿も多く見られました。
経営者が神仏に手を合わせて願うことのひとつは当然ながら「商売繁盛」であると思いますが、社員を抱えた経営者であればその願いには「社員の幸せ」も含まれていることでしょう。
「今年もなんとかこいつらを食わせていけますように…」ー そんな想いを込めて手を合わた経営者の方も多いのではないでしょうか。
社員が仕事に関して願うことと言えば「お金」と「やりがい」、まずこの2つではないでしょうか。やりがいのある仕事をして、それで認められて給料も上がっていく。口ではなんと言おうと、本質的には誰もがそれを求めるものだと思います。
そして特にこれからはこの2つを社員にしっかり与えていかないと、いい人材を確保し続けることが非常に難しい時代となりました。
まず「お金」に関してですが、「うちは給料があがっていく会社だ」と胸を張って言えない会社は要注意です。そう言うと「いや、そんな右肩上がりの時代でもないし給料を上げ続けるってのは…」と思われるかもしれませんが、なぜ要注意かと言うと、給料を上げていかれないということは、実質「減給」を続けていく会社ということになってしまうからです。
というもの、今後悪性のインフレが続く可能性が高いからです。悪性のインフルじゃないですよ(笑)。景気上昇が伴わない物価上昇です。
日本における今後のさらなる物価上昇は間違いなさそうです。理由は様々ありますが、特に米国の金利上昇にともなう円安ドル高による輸入品の価格上昇です。日本では政治的な理由もあり利上げは難しいでしょうから、この金利差による円安はさらに加速する可能性が高いと思います。
物価が上がるのに給料が据え置きということは、社員にとっては実質の所得減ということになります。この点を理解して、人材確保のために今後「賃上げ」をアピールしてくる企業は増えてくるはずです。そうなると、給料を上げていかれない会社の魅力度は大きく低下します。
また「やりがい」に関しても今後はさらに求められることになると私は予想しています。というのも、終身雇用の崩壊、副業ブーム、時短やテレワークの浸透などにともない、今後ますます会社と社員との関係性や結びつきが希薄になってくるからです。
これからは「お金(報酬)」とともに、社員を惹きつける求心力を持つことが企業にとって非常に大事になってきます。それは「やりがい」に他なりません。お金のようなニンジンだけでなく、社員の心の内から湧き上がるような「内発的動機」を持たせることが必要になってくるのです。
ただし、一つ問題があります。社員は「お金」と「やりがい」を求めるものですが、さらにもうひとつ、あることを求めます。それが「いままでのやり方で」ということです。つまり変わりたくないのです。
もちろん例外はあります。特に成長企業では「(成長するために)変化は当たり前」という暗黙の理解があります。ですが、普通の企業の普通の社員は概ね今までのやり方を変えたくないと思っています。これは通常の人の心理でしょう。
新しいことに挑戦することには当然ですがリスクが伴います。つらい思いもするでしょうし、失敗する可能性もあります。いままでやってきたプライドもありますから、現状を否定されたくないという思いもあるでしょう。
しかし、より多くのお金とやりがいを求めるならば、企業は成長しなければなりません。そんなことはまともな経営者なら誰もがわかる話です。ところが、困ったことに社員の「変わりたくない」という願望を聞き入れてしまう経営者が多いのもまた事実です。
現に、当社にご相談に来られた社長の方で、当社と共にプロジェクトを立ち上げるに当たって「社員に反対されそうだから説得してほしい」と依頼して来られた方も複数いらっしゃいましたし、実際社員に反対されてコンサルティング導入を断念された方もいらっしゃいました。
社長がこのようなマインドで経営がうまくいくはずがありません。変化を恐る社員に気をつかう経営者が、会社の業績を上げて社員に十分な報酬ややりがいを渡せるはずがないのです。
社長はまず「自分」をしっかり持つことです。自分は社長を務めるこの会社で何を実現したいのか。どのような事業を世の中に残したいのか。固く言えば「志」、ゆくる言えば個人的な「好き」、これを持つことが経営の出発点です。
そのような想いを持たない社長のもとでは、組織は冷えます。寒い現場では社員も動きたくなくなります。成長企業でないと人は育たないとよく言われるのはそういうことです。
時代の急激な変化にともなって、企業も変わらなければならないと、変化の必要性がそこかしこで叫ばれていますが、大事なことはそのような「べき論」で動くのではなく、「変わりたい」「新しいことをやってみたい」というWANT、つまり「好き」で動くことです。その想いが組織の温度を上げ、彼らの感覚を揺さぶります。「こういうことをやりたいから手伝ってくれ」でいいのです。社員にお伺いを立てることではありません。
今年はもしかしたら経済環境は厳しいものになるかもしれません。もちろんそういった変化の中にビジネスチャンスは転がっています。大事なのは社長の強い気持ちです。そこが企業成長のエンジンとなります。
2022年が良い年になるか、悪い年になってしまうのか、それは社長の想いひとつです。幸運は待っていてもやってきません。運はたぐりよせるものです。皆様が幸運を掴みとられることを心よりお祈りしております。
今年も皆様の気づきにつながるコラムを書き綴っていきたいと思います。2022年もどうぞよろしくお願いいたします。